一時期、車の欠陥による事故が相次ぎ、ニュースで大きな話題になったことがあります。
こういった事故の場合、以前は被害者自身がメーカーの製造現場や開発現場での「過失」を具体的に証明する必要がありました。
とうのも、以前は「メーカーに製造責任を問う」という法律がなかったため、民法の「不法行為」に基いてメーカーに損害賠償を請求するしか無かったのです。
自動車は数多くの部品を複雑に組み合わさて製造されています。そのため自動車の専門家でも無い一般のユーザーが、こういったメーカーの過失を証明することはほとんど不可能といってもいい位のものでした。
しかし、1995年に制定された「PL(製造物責任)法」という法律によって、このメーカーに事故の責任を問うという行為にある程度の道筋が付けられる事になります。
メーカーが損害賠償を支払う事は稀
メーカーがよく行っている自動車の欠陥を修理・改修するプログラムに、「リコール」というものがあります。
これに対して、メーカーが事故の過失を認めて損害賠償を支払うというケースは稀です。
冒頭でも書いた通り、ユーザーが自動車の欠陥を証明してメーカーの過失を問うことが事実上困難だからです。明らかな取り付けミスや設計ミスがあればメーカー側でもすぐに確認できます。しかし、仔細なセッティングのズレやパーツの経年変化による微妙な狂いなどといったものは、メーカー自身にさえ分からないこともあります。
「PL(製造物責任)法」では、自動車の欠陥を証明するだけでいい
新しく制定された「PL(製造物責任)法」では、このあたりの煩雑な手続きが全て省略され、被害者は自動車の欠陥を証明するだけでメーカーの責任を問えるようになります。
欧米では古くからこの「PL(製造物責任)法」が整備されており、日本車もアメリカで販売された車ではこの法律に基いて損害賠償が請求されていました。
1995年以降、やっと日本もこの法律を施行することになりましたが、まだまだ欧米に比べれば賠償額が少なくメーカーに甘い法律であることは否めません。
「PL(製造物責任)法」が適用されない場合
といっても自動車の欠陥が全てメーカーの責任にできるという訳ではありません。日頃からユーザーに義務付けられている点検や整備をしっかりと行い、メーカーが想定した通常の使い方をしていたという場合に限られます。
メーカーが想定している以上のパワーアップを行い、自分好みのカスタマイズカーに仕上げていたという場合は、当然ながらメーカーに損害賠償を問うことは難しくなります。