簡単に「乗り心地」と言っても、自動車の乗り心地を表す指標には「ローリング」「バウンシング」「ピッチング」「ハーシュネス」の4つ要素(揺れ方)があります。これらの4つの要素が複雑に絡み合って、それぞれの自動車に固有の「乗り心地」を形作っているわけです。
そのため、設計やセッティング段階において、これらの要素をどのように組み合わせるかというのは、設計者や技術者の大きな腕の見せ所でもあり、悩みどころでもあるわけです。
我々が自動車を買う時には、設計図やカタログを眺めているだけでは、何もわかりません。とにかくディーラーに出向いて、実際にハンドルを握ってみるしかありません。
その際に参考となるよに、今回はこの乗り心地の「4つの要素」について解説しようと思います。
乗り心地に関わる4つの要素
ローリング
車がコーナリング中に起きる横揺れを「ローリング」と言います。昔、峠を走る若者を「ローリング族」と言っていたのはこれが語源です。
コーナリングスピードに対して早い速度で横揺れが起こると、ドライバーは大きな不安とともに恐怖を感じてしまいます。
また、車を上から眺めた時、対角線を軸にして揺れる現象を「ダイヤゴナロール」と呼びますが、車の動きとリンクしないこの不自然な揺れは、ドライバーに大きな不快感を感じさせます。
バウンシング
バウンシングとは大きな段差を乗り越えた時の激しい上下動の事です。このバウンシングを制御するには「スプリング」と「ダンパー」の力が必要です。特に伸び側の制御が重要で、ここにしっかりとした高級なダンパーを使っていると、ダンパーがいつまでもだらしなく伸び縮みするような事がなく、ビシッと揺れを収束させる事ができます。
ピッチング
バウンシングよりも大きな周期のふわふわとした揺れの事を「ピッチング」と言います。ピッチングの制御もダンパーの仕事で、劣化して古くなったダンパーではこれを抑える事が出来なくなり、いつまでもふわふわと揺れ続けることになります。抑えの効いていないふわふわとした揺れほど気持ち悪いものはなく、車酔いの大きな原因にもなります。昔の車やバスで車酔いが多かったのも、このダンパーの性能がまだ悪かったということも大きいです。
ハーシュネス
路面の小さな凸凹で起きる突き上げことを「ハーシュネス」と呼びます。このハーシュネス性能が低いと「ゴツゴツ」とした乗り心地を感じることになります。
ドイツ車はバウンシングやピッチング、ローリング性能は高いのですが、この「ハーシュネス」性能の悪い車が多いです。なかなかこの「4つの要素」をバランス良く両立するのは難しいということです。しかし最近は国産のカヤバや、ドイツのビルシュタインダンパーで、周期の違う衝撃に対して2系統の経路を設け、どちらでも快適な乗り心地を確保しているダンパーもあります。
乗り心地を確かめるには
乗り心地を確かめるには、自動車評論家の意見を参考にするばかりではダメで、自分でハンドルを握ってみるしかありません。
かなりの希少車でない限り、ディーラーで頼めば試乗をさせてくれます。その際には、できればいつも自分の使っている道路に持ち込みたいところですが、なかなかそう簡単にはいきません。
「バウンシング」の確認にはディーラーでの出入りにある段差、「ピッチング」には路面のうねり、「ローリング」の確認には交差点などでの曲がり角、「ハーシュネス」には、橋脚などの継ぎ目が指標になります。
また、普段から自分が乗っている車でも、気をつけて「乗り心地」を確認する癖をつけておくと、いざ試乗となった時でもある程度正確な評価が可能になります。