F1中継をテレビで観ていると、ピットの様子が映し出されることがあります。そんな時、交換前のタイヤやスタート直前のマシンに装着されたタイヤに、薄いマットのようなカバーがグルリと巻きつけられていることがあります。
これは「タイヤウォーマー」と呼ばれる装置で、電気の力によってタイヤの表面を温める働きを担います。今度F1中継を観る機会があれば、じっくりと観察してみてください。
タイヤのグリップ力を最大限に引き出す
なぜそんな事をしてまで、タイヤを温める必要があるのかというと、冷え切った状態ではタイヤ本来のグリップ性能を発揮することができないからです。
F1用のタイヤは激しく路面に擦り付けられることによって、表面温度が100度近くまで上昇します。タイヤはこの時の温度によって程よく溶け始め、ネチャネチャとした強力なグリップ力を発揮するように設計されています。
つまりタイヤの性能をスタート直後から最大限に発揮させる為には、スタート前に「タイヤウォーマー」を使って熱しておく必要があるという訳です。
タイヤ表面を熱しておくといっても、スタート前から100度近くまで熱してしまったのでは、タイヤ表面がべチェベチャになってピット作業どころではありません。そこで、タイヤウォーマーを使う場合は、間を取って50度程度に熱することが多いです。これならピット作業に支障もありませんし、少し走るだけで理想の100度へと素早く熱することが出来ます。
蛇行走行によって素早くタイヤを加熱する
ただ、素早く熱することができるといっても、50度程度では十分なグリップ力は得られません。ドライバーは何らかのテクニックを使って、より速くタイヤ表面を熱してやる必要があります。
F1の決勝レースの前には、「フォーメーションラップ」と呼ばれる予備走行が行われます。このフォーメーションラップは、F1ドライバーがマシンやコースの状態を確認するために与えられたラップです。
あなたも、沢山のF1マシンが決勝前にクネクネと蛇行をしながら走行するシーンを観たことがあるでしょう。あれがフォーメーションラップです。この蛇行走行は何もファンサービスのためにやっているのではありません。タイヤに過剰な摩擦を与えることで、より速く理想の100度に加熱しようとしているのです。
ピットスタート後にF1マシンが不安定になる理由
ただし、決勝前にはフォーメーションラップが用意されますが、レース途中のタイヤ交換ではそういうわけにもいきません。ピットスタートごにF1マシンが不安定な挙動を示すのは、短い区間で急激に加速するという事とともに、タイヤ表面が十分に加熱されていないという理由もあるのです。
ピットスタート後の、それぞれのマシンについてそういった視点から完全するのも、新しい発見があって面白いです。