F1ドライバーとは、世界中で二十数人しかなれない選ばれた人々です。そのため、その能力や資質には、普通の人を大きく上回る超人的な要素があります。
もちろんその中には、車を速く走らせるための動体視力や反射神経、一番速いラインを見極めるための並外れたセンスなどが含まれます。
しかし、F1ドライバーになるためには、そのような車を速く走らせるための単純な要素だけでは足りません。
並外れた運の強さ
これはどのような分野でも言えることですが、大勢の中から選ばれて世界の頂点に立つためには、人よりも抜きん出た才能と共に、並外れた運の強さも必要です。
例えば、カートに親しむ環境に生まれる運、次に子供のうちから優れた指導者に恵まれる運、さらに家庭が裕福ならいう事ありません。
レースにデビューすれば、相性の良いチームと出会い、理解のあるスポンサーを獲得する運も重要です。もちろん、レースの細かな状況やライバル、マシンの不具合など運が絡む要素は数知れません。
元F1ドライバー佐藤琢磨の場合は、国内で免許停止となったため、JAFの規定により国内レースに参加する事ができなくなります。しかし、そこでふさぎ込む事無く、ヨーロッパへと活躍の場を求めF3000へと参戦。これが結果的にはきっかけとなり、F1へステップアップする道が見つかります。
これも本人の努力や才能とは別に、大きな「運」を掴んだからこそ成し遂げられた好例でしょう。
参考:免停(免許停止処分)になったF1ドライバーは、レースに出られない?【F1】
強靭なスタミナ
また、F1で活躍するためには、人並みはずれた「スタミナ」も必要です。
F1マシンには、ドライバーの身体を冷やすためのクーラーは装備されません。クーラーを装備すると車重が重くなり、速度が遅くなってしまうからです。ヘルメットの中に口から水分を補給するためのストローが装備されますが、これは暑さ対策というよりも脱水症状を防ぐための装置です。
特にブラジルやメキシコのレースでは、外気温が40度近くになる事も珍しくありません。こういった環境の中で、正確にマシンをコントロールするには、どうしても暑さに対する強さとスタミナが必要になるのです。
首の強さ
強力なパワーを発揮するF1マシンを意のままにコントロールするには、マシンの中でドライバーに掛かる強力なG(加速度)に耐える能力も重要です。
例えば、コーナーに入る前のフルブレーキングではドライバーに3Gの力が掛かります。また、高速コーナーでは、4G以上の力がドライバーを襲います。
1Gとは、普段何もしていない時に掛かる地球上の重力の事です。これが最大で4倍以上にも加速されて、ドライバーの首を中心に掛かり続けるのですから、普通の人間であれば、一周もしないうちに首がおかしくなってしまうでしょう。
そのためF1ドライバーは、顔の大きさに対して不自然なくらい太い首を持っています。これは元々「並外れて首が強い」という特徴に加え、普段から強力なGに耐えるための鍛錬をしている事の証拠でもあります。
コミュニケーション能力
最後に挙げるのは、「コミュニケーション能力」です。これは、世間で一般的に言われているような、誰とでも仲良くワイワイやるような能力とはちょっと違います。
マシンの状況を的確にスタッフに伝える能力や、自分の走りを分析し、マシンをどうセッティングすればさらに速い走りが可能になるのか、的確に考えをまとめ、それを分かりやすい言葉で正確にスタッフに伝える能力の事です。そのためには、最低限の英語能力も必要になります。
このように世界の檜舞台で活躍するF1ドライバーには、常人では到底手にする事のできない数々の超人的要素があります。
逆に、「あれ、俺、全部の要素持ってるよ」という人は、グズグズしている暇はありません。今すぐにでもF1ドライバーに挑戦してください。あなたの「並外れた運の強さ」が助けとなって、おのずとF1への道が開けれるはずです。