高級車といえば、多くの人は「メルセデスベンツ」や「BMW」なんかのドイツ製プレミアムカーを思い浮かべるでしょう。しかし、実際は「フェラーリ」とか「ランボルギーニ」などの高性能スポーツカー、俗にいう「スーパーカー」の方が桁違いに高い車が多いです。
現在、日本で公式に購入できるフェラーリの最上級モデル「フェラーリ・SF90 ストラダーレ」の場合は、なんと5,340万円もします。これほどフェラーリが高額になる理由は、車そのものの値段に加えて、なんといっても「フェラーリ」のブランド価値や希少性が大きいです。その他には、プリウスやヴィッツなんかの大衆車と比べると、圧倒的に手作りの工程が多いというのもあります。
とはいえ、「フェラーリ」はあくまで工場で生産される量産車の一種。ほぼ一品もののF1カー(マシン)と比べれば、職人による手作りの工程は少ないはずです。
そう考えると「F1カーって、いくらするんだろう?」なんて疑問が湧いてきます。ということで今回は、そんなF1カーの値段をチーム運営費や予算なんかから逆算して勝手に推測してみたいと思います。
F1マシン(カー)の値段は一台27.4億円くらい?
F1カー(マシン)を作るために必要なお金をざっと洗い出すと、まず、エンジンやシャシー、ボディを設計する技術者や、それを元に実際のF1カーを組み立てる職人、テストドライバーやチームを裏から支えるスタッフたちの人件費。もちろん、F1カーの材料費もあります。これに食費や宿泊費、交通費なんかの細々とした経費まで含めると、複雑すぎて計算のしようが無いです。
そうは言っても、ここで諦めてはF1カーの値段は分かりません。ということで、公開されているチームの運営費などから、大体の見当を付けてみようと思います。
F1チームの予算は上位チームで600億円以上
F1の運営チームが一年で使う予算は、上位チームで600億円以上、下位チームなら100億円くらいです。
フェラーリの場合は、一年で600億円くらいを使うことが多いんで、予算的には上位チームということになります。ちなみに、フェラーリが2018年度にF1運営に使った予算は4億3000万ユーロでしたから、日本円に換算すると548億円(2018年5月現在のレート)です。
この中で、純粋にF1カー開発のために使われている予算を半分くらいだと仮定すると、274億円ということになります。さらに、このお金を使ってF1マシンを10台制作すれば、一台あたりの値段は「27.8億円」という大雑把な計算がなりたつわけです。
かなり大雑把な計算ですけど、チーム運営費をベースにしてるんで、大きく外しては無いと思います。
この大雑把な公式を、予算100億円程度の下位チームに当てはめると、F1マシン一台あたりの値段は「5億円程度」ということになります。フェラーリの計算をした後に聞くとなんだかすっごく安いような気もしますが、それは単なる錯覚です。なにしろ、5億円といえば「フェラーリ・SF90 ストラダーレ」の約9台分以上ですから。
マシンの費用には、シーズン途中の改良費用も含まれる
といってもこの計算は、「チーム運営費548億円の内、半分程度をマシン制作費に使った場合」という改定に基づいて計算したおおよその額です。実際のマシン制作費用がこれと同じくらいであるという裏付けは何もありません。
さらに付け加えると、F1の場合はマシンが完成した後もそれぞれのパーツに対して日夜細かな改良が続けられます。改良を施した後テストコースを走って実際のデータを取るとか、レースで得られたデータを元にさらに改良を加えるといった事が頻繁に繰り返されていくわけです。
こういった地道な改良を繰り返していくうちに、マシンの制作に掛かる費用もドンドン吊り上がっていきます。中にはシーズンを通して開発・改良が続けられたパーツが、次のシーズンの新しい改良型マシンにに搭載されるなんて事も珍しくありません。こうなってくると、どこで使った費用がどのシーズンのマシンに使われているのか、簡単に切り分けることは不可能です。
普通は予算のあるチームの方が強い
ということで、運営規模の小さいチームであればマシンの制作費用も相対的に小さくなります。逆に、自動車メーカーが直接運営するチームや大きな企業のバックアップを受けるチームの場合は、その莫大な予算規模に合わせてマシンの制作費用も大きいです。
さっきも触れたようにその運営費用は上位チームで600億円くらい、下位チームだと100億円くらい。そんなわけで、下位チームが上位チームのトップ争いに加わるのは、中々厳しいもんがあります。普通はチームの規模に応じて、大体の順位も決まっていきます。
お金を掛けたマシンが、必ずしも強いわけじゃない
ただし、必ずしも上位チームがいつも強いというわけじゃありません。チーム内のコミュニケーションが円滑に行われ、技術やセンスに優れた設計者や技術者が揃っている場合は、かけた予算以上に良いマシンができることもあります。
こういった完成度の高いマシンをシーズン序盤から投入できれば、改良やテストが少なくて済むので効率のいいチーム運営が可能です。結果的にマシンの価格も適正に抑えられます。つまりF1の場合は、必ずしもマシン製作に莫大な資金を投入したチームが良いマシンを作れるわけではないのです。これは、以前、鈴木亜久里率いる「スーパーアグリ」が、一時的に本家のホンダF1チームを成績で上回っていた事からも明らかです。
まあ、とはいえ、そんな逆転劇が起きるのは予算規模がある程度近い場合。「最下位チームがトップへ躍り出る」というほどのドラマチックな展開はむずかしいです。