F1GPに参戦するためには、「スーパーライセンス」という、国際自動車連盟(FIA)が発給するモータースポーツライセンスが必要です。
このスーパーライセンスの取得条件には、「申請時に有効な自動車運転免許を所持する」という項目があります。
そのため、暴走運転や飲酒運転をして免許停止処分をくらうと、スーパーライセンスも停止され、F1には出場できないような気がしますね。
しかし実際には、免許停止処分をくらっても「スーパーライセンス」の効力には何の影響もありません。そのまま何食わぬ顔をして、F1GPに出場し続けることができます。これはF1以外の国際ライセンスでも同じです。
免停になるとF1には参戦できるが、国内レースに出場することはできない
ただし、日本国内で発給される「国内ライセンス」の場合は別です。交通違反をして免許停止処分になると、同時に国内ライセンスも停止され、それ以降、国内のレースに参加することが出来なくなります。
最近、インディ500で優勝して大きな話題を集めている佐藤琢磨ですが、彼が1998年に日本国内で暴走運転をして免許停止処分になった時、国内のレースに出場することは出来なくなりましたが、イギリスで行われるF3000に出場して優勝したというエピソードがあります。
また、イタリアのF1レーサー、ジャンカルロ・フィジケラも、2007年に暴走運転で免許を停止されていますが、そのままF1GPには出場を続けています。
つまり、重大な交通違反を犯して免許を停止されると、国内のライセンスは停止されて国内レースへの参戦はできなくなりますが、スーパーライセンスを始めとする国際ライセンスには何の影響も無いため、そのままF1GPなど海外のレースには参戦し続けることが可能なのです。
スーパーライセンス発給を巡るトラブルや問題
このF1GPに出場するために欠かすことのできない「スーパーライセンス」ですが、その発給を巡っては様々なトラブルや問題をはらんでいます。
特にライセンスの発給には最終的に「FIAの委員会による承認」という過程があり、これがライセンスの発給を恣意的なものにしているのです。
例えば、1992年に中谷明彦はブラバムと契約を結んでF1参戦を目指していましたが、成績不振を理由にライセンスの発給が行われませんでした。しかし、その審査の詳細は明らかにされていません。なぜライセンスが発給されなかったのか、具体的な理由はFIA委員のみぞ知るといったところです。
アイルトン・セナは、1990年にスーパーライセンスの更新を控えていました。しかし当時FISAの会長であったジャン・マリー・バレストは、同郷のアラン・プロストを優勝させたい気持ちが高まり過ぎて、ライセンスの発給を渋るという珍事が起きています。この時はその他のF1関係者の抗議によって事なきを得ましたが、いかにこの「スーパーライセンス」の発給がFIA委員の不透明な恣意によって決定されているかを物語る特徴的なエピソードです。