F1は、マシンを超高速で走らせることで速さを競う競技です。そのため、万が一の事があれば、大惨事に繋がることも少なくありません。
F1マシンの技術が進んだといっても、100%安全なマシンを作ることは今のところ不可能なのです。
その中でもクラッシュによる「火災」は、ドライバーの命を奪う可能性の高い危険なトラブルのひとつです。
ヘルメットの下に被るフェイスマスクは、この火災からドライバーの身を守るという大切な役割を担います。
レーシングスーツは、ドライバーを火災から守る
ドライバーはこの火災から身を守るため、耐火素材でできたレーシングスーツを着用しています。このレーシングスーツは、850度の火災に対してもドライバーを35秒以上守るように設計されています。つまりクラッシュして車が大きな炎に包まれた場合、35秒以内に助けることが出来なければ、ドライバーの生還は難しくなるという事です。
35秒というとちょっと短いような気もしますが、FIAがレース規定として盛り込んでいるからにはそれ相応の根拠があります。サーキットにはトラブルに備えて「オフィシャル」と呼ばれるスタッフが常駐しています。このオフィシャルが事故現場に駆けつけ、車を消化するまでの時間を余裕を持って考慮するとこの35秒になるという訳です。
ちなみにクラッシュに関わるオフィシャルには、コースオフィシャル(事故車の撤去)、レスキューオフィシャル(ドライバーの救助)、ファイアーオフィシャル(事故車の消火)が存在しています。
このレーシングスーツの着用はレース規定により義務付けられており、着用していない場合はレースに参加することができません。
また、同時に同じ耐火素材で作られた「グローブ」や「下着」、「ブーツ」と並んで、「フェイスマスク」の着用も義務付けられています。
フェイスマスクは、ドライバーの顔を火災から守る
フェイスマスクもレーシングスーツと同じ耐火素材で製作されているため、ドライバーの顔を高温の炎からしっかりと保護する機能があります。
フェイスマスクのデザインには、ドライバーの好みに合わせて様々なタイプがあります。例えば、両目を楕円形の穴の中に出すタイプや、両目がそれぞれ独立しているタイプ、穴がひょうたん型のタイプなどです。
また口はしっかりと布で覆われますが、ドライビング中の水分補給のため、小さな穴が開けられている場合もあります。
フェイスマスクは使い捨て?
このフェイスマスク、通常はレースごとに廃棄する使い捨てタイプが主流です。ただ、中には何度も使い古したほうがつけ心地が良いとか、勝ったレースの時のマスクを付けることで縁起を担ぐドライバーもいます。
もちろんその場合は、キレイに洗濯してから使う事になります。マスクは口と鼻を覆う形をしていますので、臭いが強いとレースどころではありません。
ただ、バイクレースを見ていると、このタイプのフェイスマスクを装着している人はいません。というのも、バイクレースは、マシンの中に取り残されて火災に巻き込まれるといった事がありえないからです。
ただしその半面、クラッシュの際は路面に投げ出されて大きなダメージを受ける事になります。そのためバイクレーサーのレーシングスーツには、耐火性よりも衝撃や摩擦に強い素材が使われているのです。