物損事故といえば、ぶつかってきた相手の車とか、道路に設置されているガードレールや標識、信号機。その他には、道路脇にある住居や店舗などの建物が対象となります。
このような物に自動車がぶつかって損害が発生した時、被害者は加害者に対して「慰謝料」を請求する事ができるのでしょうか?
物損事故に対して、慰謝料が支払われることは無い
結論から言うと、物損事故の場合、原則として「慰謝料」が支払われることはありません。
交通事故によって物が壊れたしても、その損害をお金を支払うことによって修復、もしくは買い換える事が可能だからです。難しい言葉で言えば、「代替性」があるという事になります。
これはどんな高級品でも基本的には同じです。店舗内がめちゃくちゃに壊されたり、住居の中に車が飛び込んで、テレビやパソコン、家財道具一式が失われたとしても、お金を支払えば元通りに復元できるからです。
もちろん物損事故の場合も、その状況によって色々な事情が考えられます。その人にとってその物にどんな意味があるかは、価格や大きさ、物理的な要件からは一切判断できません。
そのため、それぞれの事情を細かく考慮しながら、慰謝料を決めることは不可能なのです。これを無理やり捻じ曲げて、強引に慰謝料を設定しようとすれば、かえって不平等を招くことになります。
ペットや代替の効かない貴重な物の場合
といっても、家族同様にかわいがっていたペットや、他に替えの効かない貴重な物が失われた場合は別です。こういった特別に考慮する事情が明らかな場合は、物損事故といえども慰謝料が支払われる事があります。
その物が失われた事により、被害者が相当な苦痛を受けた事が誰の目から見ても「明らか」だからです。
こういった場合は、その物の時価総額とは別に慰謝料が支払われます。といっても、慰謝料の支払いに関しては「社会通念上妥当な範囲におさめる」という、基本理念があります。そのため、いくら貴重なものだからといって、あまりにも高額な慰謝料が支払われることはありません。
対物保険から慰謝料を支払わせるのは難しい
また損害保険会社には、「物損事故に対しては基本的には慰謝料を支払わない」という運営方針があります。個人が保険会社を相手取って、対物保険の対象として慰謝料を認めさせることはかなり難しいといえます。
そのため、こういった慰謝料の支払いを勝ち取ろうと思えば、どうしても弁護士などの専門家の力が必要なのです。