自動車において速さを決定づけている要素は、何も直線をまっすぐ走る事だけではありません。
自動車の速さを決定づける要素
その他にも、「いかにコーナリングを早く行うことができるのか」とか、「いかに短い距離で、目的の速度まで素早く減速できるのか」といったことも重要な要素となります。
これは、自動車レースにおいても同じで、「0~400mをいかに速く走ることができるのか」を競う「ドラッグレース」があったり、「狭い場所に沢山のコーナーが設置してあるコースを、いかに速く走ることができるのか」を競う「ジムカーナ」などがあります。その他にもアメリカのインディ500のように、「楕円形のオーバルコースをいかに速く走ることができるのか」を競うレースもあります。
F1マシンの場合は
これに対して「F1レース」では、これら全ての要素が複合的に求められます。
加速を速くするためには、「いかに低速域から大きなトルクを発揮し、ボディを軽量化してそのトルクを余すことなく路面に伝えることができるのか」、直線を速く走るためには「いかに最大パワーを上げ、空気抵抗を減らしマシンを安定させることができるのか」、コーナリングを速くするためには「コーナリング中においてもしっかりと路面にタイヤを密着させ、マシンの姿勢を安定させるためにバランス良くシャシーを仕上げられるのか」、ブレーキングを速くするためには、「ブレーキの制動力はもとより、その制動力をどれだけタイヤと路面の摩擦を使って受け止めることができるのか」といった要素が複雑に絡み合ってレース全体の速さとして現れます。
ドライバーやスタッフの技量も重要な要素
もちろんピットスタッフの作業練度や、当然ながらF1ドライバーのドライビングテクニックも速さを決定づける大きな要素の一つです。
全ての要素を限界まで追求し、「もうコレ以上どうしようもない」といった完璧な仕上がりのマシンを前にして、さらにそこからミリ秒単位で速さを極められるドライバーも存在しています。
その他には、ドライバーとマシンの相性もあります。実力ナンバー1のドライバーAとの相性はいまいちなのに、2番手のドライバーBとの相性は最高といった事も珍しくありません。
F1レースが「モータースポーツの最高峰」と呼ばれるのも、「こういった多くの要素をバランス良く追求しなければならない」といった理由が根底にあります。
すべての土台となるシャシーの設計
こういった複雑な要素は、レース当日、または直前に、サーキットの現場に来てから合わせるのでは遅すぎます。
もちろん、レース中のセッティングや、シーズンを通しての調整も重要な要素ではあります。しかし、それ以上に、シーズンに入る前のマシン設計がより大きなウェイトを占めています。
その年の新しいレース規定や、ドライバーとの相性、前シーズンでの問題のあったポイントなど、全てを洗い出して基本となるしっかりとしたシャシーを設計する事が重要なのです。
この基本シャシーがバランスよく仕上がれば、シーズン途中の調整も比較的スムーズに進めることができます。つまり、シャシーの仕上がりによって、そのシーズンのチーム成績も大きく左右されるという事になります。