大パワーを絞り出して走るF1マシンに使われている燃料と、普通の自動車に使われているハイオクガソリン。さぞやその成分には大きな違いがあるのだろうと思いきや、実際にはほとんどその内容に違いはありません。
つまり、F1マシンに普通のハイオクガソリンを入れても、全く問題なく走ることができるのです。
F1草創期の燃料
ただし、これは現代におけるF1の話です。F1草創期の燃料には、特殊な化学物質が添加剤として使われていました。F1マシンに大パワーを発揮させるため、普通のガソリンとは全く異なる特殊な成分の燃料を配合していたのです。
ところがこの特殊な燃料や添加剤には、有害な気化ガスを発生させるという大きなデメリットがありました。そのままではドライバーやメカニックなど、F1の現場で働いている人たちに多大な健康被害が出ると問題になり、1960年代以降、レース規定の改定により使用が制限されるようになります。
といっても、この時代の燃料は普通のガソリンとは違います。1980年代に入るとF1レースはターボ全盛時代を迎え、燃費を向上させるため、水よりも比率の重い特殊な燃料が使われていました。
1992年以降、普通のハイオクガソリンが使われるようになる
さらに時代が流れて、1992年。F1の主催者、国際自動車連盟は、F1の現場から有害な化学物質を一掃するため、F1で使用することのできる燃料に、一般のハイオクガソリンと同じ成分の燃料を使う事を定めます。
といってもこのF1用のガソリン。それぞれのガソリンメーカーによって特殊な配合が施されています。成分は普通のハイオクガソリンと同じながら、その配合の比率に、気候やサーキットのレイアウト、マシン等の違いによって複雑な調整が加えられているのです。
しかもこのF1専用の燃料。普通のハイオクガソリンと同じ成分にも関わらず、1Lにつき2,500円~3,000円という高い値段が付けられています。一般的なハイオクガソリンが125円前後(2017年6月9日現在の東京価格)ですから、実に24倍の違いがある事になります。
普通の自動車にF1燃料を給油したら?
F1マシンに普通のハイオクガソリンを入れても使えるという事は、その逆がどうなるかも気になりますね。
あなたの車をF1開催中の鈴鹿サーキットに持ち込んで(普通はこの時点で追い返されますが)、ピットイン、ピットクルーにF1専用燃料を給油してもらった場合、成分が同じなのですから、当然ながらあなたの自動車も普通に走る事ができます。ただし、普通の自動車は市販のハイオクガソリンを使って、設計、開発、テストが行われています。
成分の配合が違うF1用の燃料を給油すれば、ある程度の性能低下や燃費性能低下は避けられません。
シェルのプレミアムガソリン
シェルのハイオクガソリン「Shell V-Power」は、フェラーリとのパートナーシップの中で生まれた高性能ハイオクガソリンです。そのため、F1の技術が普通のハイオクガソリンにもふんだんに盛り込まれています。
秋ろーが自分の車で試した限りでは、この「Shell V-Power」が市販ハイオクガソリンの中で一番パワフルでした。
レギュラーガソリンと違って、ハイオクガソリンはメーカーによって成分が異なります。自分の車との相性もありますので、興味のある方は一度色々なハイオクガソリンを入れて、乗り比べると面白いかもしれません。
2017年の燃料規約変更とは?
2017年。F1の燃料規約が変更されます。これまで自由に燃料の配合パターンを用意する事ができましたが、これがシーズン中に5種類のみに制限されるようになります。
加えて、決勝ではさらに2つの配合パターンに使用が制限されます。これは、無尽蔵に燃料パターンを用意する事による、F1運営の経費削減と、予算のあるチームと無いチームの格差を縮小するという2つの狙いがあります。