給与所得者の逸失利益を求めるには、前年の年収実績を参考にします。
この年収には、基本給の他に時間外手当、諸手当(交通費は含まない)、ボーナスなどが含まれます。
大きな会社に務める人や公務員など、給与体系がしっかりと確立されている場合は比較的簡単に計算することができますが、会社の業績に大きな波があったり個人の成果報酬による割合が多い場合は別です。
こういった年収の上下が激しい給与体系の場合は、過去数年間の年収を参考に平均値が算出され、それを元に逸失利益が支払われることになります。
逸失利益には昇給額も加算される
年間の昇給分がほぼ確定されているような年功序列制の会社であれば、ほぼそのまま昇給分が加算される事になります。
明確化されていない企業の場合は、平均的な昇給額が加算されます。最近の企業は年功序列を徐々に廃止する傾向にありますが、ある年齢で昇給が止まるような仕組みが導入されている場合は、その仕組に則って逸失利益が計算されます。
逸失利益における定年の考え方
最近の企業では、年金の支給年齢引き上げの影響もあり、徐々に定年の年齢も引き上げられています。65歳まで働くことのできる会社も珍しくありません。
逸失利益を求める場合には、この働く事のできる限界年齢(労働能力喪失期間)を67歳と定めています。
そのため被害者が死亡している場合には、死亡時の年齢からこの「労働能力喪失期間(67歳)」までの合計年収を受け取ることができるのです。
その際、定年してから67歳までの年収は、その年令の平均賃金を元に計算されます。
女性の生涯賃金
この逸失利益を求める際に大きな問題となるのが、女性の年収をどう計算するのかという点です。
現在、法律上は男女の雇用による差別は認められていませんが、平均賃金を見る場合、未だに歴然とした男女格差があるのも事実です。そのため、逸失利益を計算する場合には、女性の平均賃金が参考にされます。
ただし、これから多くの可能性を残す未成年者の場合はこの限りではありません。2001年の裁判例では、事故により死亡した未成年女子の逸失利益を計算する際、女性の平均賃金ではなく男女の平均賃金が使われるという判決が出ています。
女性の場合は結婚的歴も考慮される
加えて女性の場合は、結婚などにより早期に退職する人が多いため、結婚適齢期を超えてからの年収には、その現職の昇給額を加算していく方法ではなく、一般的な女性の平均賃金が使われる事になります。
ただし、それなりに年齢を重ね、金属年数も長く実績のある女性については、男性と同じように昇給額が加算されていきます。