イギリスの自動車情報サイト「Car Magazine」によりますと、アメリカのアップル社がマクラーレン・テクノロジー・グループを買収する検討をしているか、もしくは完全に買収している可能性があると報告しています。
グループの株式の大半をアップルが抑えることになれば、グループ傘下の「マクラーレン・レーシング」を含む「マクラーレン・オートモーティブ」の経営権は完全にアップルの物となります。
マクラーレン社は否定
ただマクラーレンはこの投資話について公式に否定しています。
またロイター社の最近の報告でも、マークラーレンはアップルとの協議を行っていないと述べているそうですが、何らかの機密の会議を同社との間に定期的に行っていることは間違いありません。
アップルがマクラーレンを欲しがる理由
アップルがマクラーレンを欲しがる理由は、マクラーレンが所有する自動車関連の豊富な技術にあります。かねてからアップルは自動車を秘密裏に開発しているのではないかと言われていました。そのため、数多くのマクラーレンの技術がアップルのものとなれば、その自動車開発プロジェクトを大きく前進させることになります。
最近マクラーレンが特に開発に心血を注いでいるのが、ハイブリッドや電気自動車に関する環境技術です。アップルの最初の自動車がスポーツカーやレーシングカーということは考えにくいので、このマクラーレンの技術を使ってゼロエミッション車を生産しようとしているのかもしれません。
マクラーレンの買収費用は?
マクラーレンは買収費用としてアップルに10億ユーロ(約1124億円)から15億ユーロ(約1701億円)を要求するのではないかと言われています。アップルは2014年にビートオーディオの買収費用として20億ユーロ(約2268億円)を支払っていますので、それほど高額ということもないでしょう。
アップルの自動車開発プロジェクト「タイタン」
アップルが極秘裏に進めている自動車開発プロジェクトは「タイタン」と呼ばれています。噂では最近このタイタンプロジェクトから、多数の人材が解雇され流出しているそうです。どうやらアップルは自動車の会社を作るのをやめ、その代りにアップル独自の自動車を作るため、自動走行技術を含めた様々な自動車技術に注目しているようです。おそらく今回のマクラーレン買収もそのプロジェクトの一環でしょう。
アップルの自動車開発力がテスラと並ぶ
マクラーレンは自分自身で自動車の開発からデザイン、設計、製造まで一貫して行うことのできる幅広い技術を保有しています。この技術がアップルに全て渡ることになれば、アップルは電気自動車の開発から製造までを一貫して手がける「テスラモーターズ」に匹敵する力を得ることになります。
つまりアップルはマクラーレンの持つ「データ解析技術」「電子技術」「複合材料」「素材技術」「自動車製造技術」などの豊富な技術と知見を、多額の費用と引き換えに自由に使えるようになるわけです。
少し前に報じられたタイタン関連の人材解雇は、このあたりの技術を獲得する目処がついたためということになります。
アメリカの会社らしいドライな人事ですが、働く方も優秀な人ばかりなので日本人が思うほど悲しい話ではありません。いい機会だからちょっとのんびりしてから働こうとか、次はあの会社に行ってみようといった程度のことです。
買収相手として三菱自動車はなかったのか?
ちょっと前、三菱自動車が燃費不正問題で揺れている時、次の買収相手はグーグルか?アップルか?などと噂されていました。また、次世代の自動運転カーと言われてイメージするのは、グーグルが開発している「グーグルカー」のようなコンパクトなシティコミューターですから、三菱の「i-MiEV」などはぴったりだと思います。
日産が三菱に投資した額は2000億円とも言われていますので、世界一の時価総額を誇るアップルにとっても簡単に払える額です。
実際の買収となると株式を保有している会社との協議や、三菱自動車自身の意向などもあるので一概には言えませんが、そういった細い協議がスムーズに進んでいたとしても、アップルが三菱自動車を買収することはなかったのではないでしょうか。
その理由は、iPhoneの製造管理を考えると分かりやすくなります。アップルは自社で設計デザインした商品を海外の工場で安く組み立てるというビジネスモデルが大きな特徴です。そのため、世界中に展開している三菱自動車の生産施設はそれほど魅力的に映らないばかりか、大きな負債と感じられるでしょう。
さらに技術的にも電気自動車にはパイオニアとしての一日の長がありますが、投資額の少なさから現在は他社にかなりキャッチアップされています。自動運転技術についてはグーグルやトヨタ、メルセデスベンツに比べると遠く及びません。
逆に日産自動車にとっては、「軽自動車の開発製造技術」「タイを中心としたアジア市場」「タイを中心としたアジアの生産設備」などを保有する三菱自動車は、日産の技術と設備を見事に補完するベストパートナーということがいえます。
(参考:Car Magazine)