昨年、欧州を中心に大きな話題となった、フォルクスワーゲンのディーゼルエンジン問題は、それまで次のクリーンエネルギーの本命と言われていたディーゼルエンジンのイメージを大きく貶めることとなりました。
ただ、この問題のポイントはフォルクスワーゲン社の不正であって、ディーゼルエンジン自体の可能性が失われたという訳ではありません。
バーズ大学のクリス・ブレース准教授によると、今後のディーゼルエンジンの可能性を握る技術について、4つの技術が挙げられています。
その技術とは、「廃棄後処理」「可変圧縮比」「気筒休止」「電気ターボチャージャー」の4つです。
排気後処理
排気後処理とは、触媒などを用いてディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる有毒物質を除去する技術です。近年注目されている技術は、「尿素SCR」というもので、これは尿素を使って排気ガス中のNOxを除去するシステムです。
この「尿素SCR」は今までの触媒と違い、燃費の悪化が少なく、トータルコストでもほとんど変わらない値を示します。ただ、尿素水の補充を定期的に行う必要があるなど、今までのシステムと違った手間がかかかかるのが難点です。
可変圧縮比
可変圧縮比とは、エンジンの使用状況に応じて、シリンダー内の圧縮比を最適な値に変更、高負荷時の圧縮比を最適にコントロールすることで、燃費を向上させる技術です。
この技術は、すでにガソリン車で日産自動車が実用化させており、ガソリンエンジンながらディーゼルエンジン並みの高い燃費効率を実現しています。
これをディーゼルエンジンに組み込めば、当然ながらさらなる燃費向上が期待できます。
気筒休止
気筒休止とは、例えば4気筒エンジンの場合、高速走行時などあまりパワーが必要ない場合に限って2気筒を休止させ、エンジンの燃費効率を向上させようと考え出された技術です。
ガソリンエンジンではすでにポピュラーな技術ですが、これをディーゼルエンジンと組み合わせる場合は、気筒休止時に排気ガスの温度が低くなり、触媒がうまく作動しないという問題が起きます。
電気ターボチャージャー
電気ターボチャージャーとは、通常のターボエンジンがエンジンの排気ガスを使ってターボチャージャーを駆動、シリンダー内に圧縮空気を送りこむの対し、電気でターボチャージャーを駆動するのが大きな特徴です。
これによって、排気ガスの圧力が低い低回転時からしっかりとエンジンを過給することが出来ます。つまり通常のターボエンジンのようなターボラグが発生せず、また、触媒の作動温度まで素早くエンジンを温めることも可能になります。加えて燃費効率も向上するというわけです。
まとめ
欧州では法律の関係上「PHEV」が優位ということもあり、最近はそのラインナップを急激に増やしています。また、フォルクスワーゲン自体も電気自動車に注力すると発表するなど、一時期ディーゼルエンジンが独占していた市場にも多様な変化がみられます。
ただ、それでもディーゼルエンジンが完全に過去の技術となったわけではなく、現在でも多くの可能性の一つとして各社から新しいディーゼルエンジンが発売され続けています。
メルセデスベンツのディーゼルエンジンでは、すでに「尿素SCR」がディーゼルエンジンの主要な技術となっており、さらにハイブリッドシステムと組み合わされた高効率で新しいシステムも開発されています。
現在は次の技術にこれといった決め手がないため、各社で様々な試行錯誤が行われているというのが実情です。今回ご紹介した技術だけにとどまらず、今後、各社から新しい技術が続々と登場する可能性があります。
(参考:CAR MAGAZINE)