25日付けのニュースですが、アメリカのフォードが、日本とインドネシア市場から撤退する事を決めたそうです。理由は収益の改善が見込めないためということです。
欧州車的な性格のヨーロッパフォード
フォードといえば、マスタングとかリンカーン、エクスプローラーといった大きい車を想像しますが、実際にはヨーロッパフォードが開発した、フィエスタとかフォーカスという小型車もあります。
少し前には「Ka」というリッターカークラスの楽しいスタイリングが印象的な車もありました。
フィエスタは実質的に5ナンバーサイズで日本の交通事情にマッチしており、エンジンも快活なダウンサイジングターボで、ハンドリングも良い車です。
ヨーロッパでは、VWポロやプジョー208と同様に売れベストセラーカーとなっています。
このフィエスタは、車のキャラクターからいえば、アメリカ車というよりヨーロッパ車と言った方が当てはまります。
日本人はこういった車が好きなので、上手く売ることが出来ればもう少し販売台数を伸ばせたのではないかと思います。
撤退の理由
撤退の理由として「収益の改善が見込めない」と言っていますが、具体的には少子化による人口減少や若者の車離れ、それから今後のさらなる消費税増税が頭にあるのでしょう。
撤退後は、人口の多い中国市場に経営資源を集中していくと思われます。
この事から分かるように、海外企業に日本市場で仕事をしてもらおうと思えば、消費税増税などして市場を冷ますのは逆効果だと思います。
また、「法人税が高すぎるから外国企業が来てくれない」といった理由から、日本政府は「法人税減税」をしよとしていますが、これなどもほとんど意味はありません。
それよりも、日本国内の景気を良くするのが一番の近道だと思います。
人件費の安い新興国が、法人税を安くして企業を誘致しているのは、それ以外に魅力がないからです。
日本には、大きな市場と優秀な人材や技術力があるのですから、同じ戦略を取る意味はありません。
フォードの今後
フォードの話に戻ると、実際、フォードが中国へ経営資源を集中しても、厳しさは変わらないと思います。
フォードが日本市場で成功できなかったのは、日本市場のせいばかりではなく、フォードの戦略ミスが大きいからです。
先細り感のある厳しい中国市場ですが、ヨーロッパフォードの商品を中心に、上手く欧州車的な魅力を訴えることが出来れば、あるいは成功できるかもしれません。
今後のサービス体制
また、今後、ユーザーの一番の心配事は「サービズ体制がどうなるか」ということでしょう。
まだフォードからの公式発表(現在フォードのホームページに、この件に関する正式な告知は出ていません)はありませんので、具体的な事はいえませんが、今までの海外ブランド撤退の事例をみても、このような大きな企業の場合なんらかのサービス体制を構築してから撤退する事が多いです。
しかし、拠点数が減ったり、他社で面倒を見てもらうことになったり、引受先の規模によっては、今までのようなサービスは期待できないでしょう。
フォード車に詳しいメカニックに見てもらうという事も難しくなります。
また、それならば売ってしまおうと考えても、下取り価格は急落するでしょうから、乗りつぶすつもりで何年か使い続けるしかありません。
僕がフィエスタのオーナーで、この車が気に入っているとしたら、なんとかフォードに詳しい町工場を見つけて、次に欲しい車が出るまで乗り続けると思います。
そしてサービス体制の新しい引受先と、この町工場で車の面倒をみてもらいながらなんとか維持します。
(2017/01/01追記)
2016年の6月、フォード・モーター撤退後のアフターサービス引受先として、「VTホールディングス」の子会社「ピーシーアイ」が選ばれました。これにより、フォート撤退後のアフターサービスの心配はいらなくなりました。
また、「ピーシーアイ」が運営する「PCIフォードWebサイト」を確認してみると、全国に幅広くサービス網が維持されていますので、当面は地方のユーザーも今まで通りのサービスを受けることができます。
親会社の「VTホールディングス」は、日産系ディーラー及びホンダ系ディーラーを扱う自動車販売業者です。また子会社の「ピーシーアイ」は、サーブ破綻後のアフターサービスを全面的にに請け負う業務を行っています。今回、正式なアフターサービスの引受先としてこの「ピーシーアイ」が選定されたのは、このあたりの豊富な経験が理由のようです。