歩行者の横を車で通過する時、スピードを落とさずに通過すると、意図せず水たまりの泥水を掛けてしまう事があります。
こういう時、歩行者が高級な晴れ着でも着ていようものなら、高額な損害賠償を請求されることになります。
それでは、不注意から車に追突してしまった車に、結婚を控えた女性が乗っていた場合はどうなるのでしょう。
タクシーが後方から追突!
こえは、1987年11月。北九州市の小倉区で起きたエピソードです。
北九州市在住のA子さん(30歳)は、赤信号で停車して信号が変わるのを待っていました。そこへタクシーを運転するN(36歳)がやってきます。
Nは最近の疲労が蓄積され、今ひとつ運転に集中できません。あたりをキョロキョロと落ち着き無く見回しているうちに、ついうっかり、信号待ちをしていたA子さんの車に追突してしまいました。
A子さんの車は大破、幸いA子さんに大きな怪我はありませんでしたが、追突のショックで首に違和感をおぼえます。
怪我の後遺症で散々な結婚式に
その後、タクシードライバーのNの通報により救急車が駆けつけ、A子さんは病院へと搬送。全治15日間のむち打ち症と診断されます。
とここまではよくある普通の交通事故ですが、なんとこのA子さん、2日後に結婚式を控える花嫁だったのです。
首に痛みはあるものの、なんとか結婚式だけは挙げたいと、治療を延期。結婚式を予定通りの2日後に挙げています。
痛みに耐えて結婚式を挙げるA子さんですが、結婚式の途中で急に首の痛みが悪化。苦肉の策でスケジュールを短く切り上げ、なんとか形だけは結婚式の体裁を整えたそうですが、楽しみにしていた結婚式は散々なものとなってしまいました。
当然ながら、この後の新婚旅行も中止せざるを得ません。
タクシー会社と運転手に慰謝料を請求
怒りが収まらないA子さんは、タクシー会社と運転手を相手取り、結婚式が満足に挙げられなかった事に対して250万円の慰謝料を請求します。
裁判では全額は認められなかったものの、慰謝料として100万円の支払いを命じる判決がくだされます。ただし、同時に請求の訴えが出されていた、A子さんの父親に対する慰謝料は認められませんでした。
この裁判では慰謝料だけが争われましたが、新婚旅行について既に支払いが済んでおり、いくらかのキャンセル料が発生している場合は、その分を損害賠償として加害者に請求することができます。結婚式のキャンセルについても同様です。
全額の支払いは受けられなかったものの、ある程度の訴えが認められたという事で、A子さんは納得。後日、治療が終わってから新婚旅行にも行き、幸せな結婚生活に戻っていったそうです。