福島市から北東へ15kmほど行ったところにある保原市は、人口25,000人程度の小さな町です。
1984年5月の深夜11時ごろ、この保原市を南北に走る国道349号線で、ちょっと奇妙な事故が起きました。
国道といってもこのあたりは普段あまり車が通らない静かな場所なのですが、その日は突然、近所に響き渡るような大きな衝突音がしました。
誰もいないのに大きな衝突音が!?
この大きな衝撃音に驚いた近所の住民は、不安になってもよりの警察に通報します。
それから数分後、福島県警の警察官が現場に駆けつけます。しかし、国道の上に事故を起こしたような車は一台も見当たらず、ガードレールが大きく損傷しているだけでした。
ガードレールの外は大きな崖になっています。現場の状況を見た警察官は、「もしかして事故を起こした自動車が崖の下に転落しているかもしれない」と、暗い崖の下を捜索しますが、車の残骸は見当たりません。代わりになぜか小型トラック用のタイヤが放置されていました。
しかし、トラックがタイヤを落としたくらいで、辺りに響き渡るような大きな音がするはずもありません。困った警察官は、「明朝、明るくなってからあらためて現場検証をしよう」と、その日は一旦署に帰ることにしました。
道路に不思議な黒い跡
明朝、警察官があらためて事故現場に戻ってみると、そこには延々と何かを引きずったような黒い跡が道路に刻まれていました。
その時はこの黒い跡が何を意味するものかいまひとつ掴みきれませんでしたが、「この黒い跡を辿れば、今回の騒動の謎が解けるかもしれない」と直感的に感じ、捜索を開始します。
この黒い跡を追跡すること数分、警察官はとある空き地にたどり着きます。距離にして2km程度でしょうか、空き地の中に入ってみると小型のトラックが放置されていました。
この小型トラックを手がかりに捜査が進み、近所に済む会社員K(27歳)が器物破損の容疑で逮捕される事になります。この時トラックはボロボロに壊れており、Kも頭に軽い傷を負っていました。
飲酒運転に加えて無免許がばれるのが怖くて逃走
このK、事件当日は自分の務める会社から勝手に小型トラックを持ち出して乗り回していたそうです。しかも今まで免許を取得した事がなく、その時は飲酒までしていたというから驚いてしまいます。
事故当日は、ガードレールに激しくぶつかった影響で左後輪を脱落してしまいましたが、飲酒運転や無免許運転がばれるのが怖くなり、3輪のまま荷台を引きずって空き地まで逃走したそうです。
無免許に加えて飲酒までしているのにも関わらず、よく3輪で走れたなあと感心してしまいます。そのテクニックを活かして真面目に教習所に通っていたらすぐに免許が取れたでしょう。この男は自分の器用さを活かす場所を完全に間違っていますね。