前回この「こぼれ話」のコーナーでは、鹿と衝突して事故を起こした人のエピソードを紹介しました。
今回は、鹿よりもさらに巨大で獰猛なクマと衝突した男性のエピソードです。
中央分離帯になにやら黒い塊が
1979年7月、栃木県に在住する青木さん(当時38歳)は、北陸自動車道の下り線をワゴン車で走っていました。
ふと中央分離帯を見ると、そこに黒い塊のような物が見えます。トラックから落ちたゴミか何かだろうと思った青木さんは、そのままの速度を維持してその横を通過することにします。
ところが、車が近づくとその黒い塊は急に動き出し、青木さんの運転するワゴン車の前に飛び出してしまいます。
咄嗟の事に反応しきれなかった青木さんは、その黒い塊に右フェンダーをぶつけてしまいます。事故の衝撃で青木さんの車はそのまま左側のガードレールに衝突、なんとかブレーキを踏んだ所で停車しました。
驚いた青木さんですが、しばらく車内で息を整えて落ち着きを取り戻し、車とぶつかった黒い塊を確認します。
ぶつかったのは1.5Mの大熊
そこに横たわっていたのは、全長1.5Mもあろうかという大きな黒いクマです。しばらく気を失っていたそのクマは、急に意識を取り戻すと一目散に森の中へと逃げ込んだそうです。
その間、怒って急に襲いかかって来たらどうしようと、「生きた心地がしなかった」と青木さんはいいます。
こちらが例えワゴン車に乗っているといっても、相手は獰猛なクマです。襲いかかられたら一溜りもありません。事故に遭ったのは運が悪いとはいえ、そのまま森に逃げてくれたのは不幸中の幸いでした。
クマが壊したガードレールの修理代は誰が払う?
この後、高速自動車警察隊に連絡した青木さんは、そのまま警察に事情を聞かれますが、車にクマの毛が残っていたことでお咎めなしとなります。
多少青木さんに前方不注意の過失があるとはいえ、事故の主な原因は急に飛び出してきたクマにあるという訳です。
「車の修理代は掛かるけど、お咎めなしとなった事で良しとしよう」と一安心する青木さんですが、この後、警察と入れ替わるように現れた道路公団の職員によって、「ガードレールが壊れていますので修理代金を請求します」と10万円を請求されてしまいます。
事故の責任はクマにあると主張しますが、まったく聞き言えれてもらえません。結局「クマに支払ってもらうわけにもいくまい」と諦め、全額の支払いに応じました。
クマに襲われる事はなかったといえ、自分の車とガードレールの修理代で多額の出費を強いられ、青木さんは自宅に帰りつくまで運転に集中仕切れなかったそうです。