F1など、自動車レースを行うドライバーが直用しているレーシングスーツには、肩の部分に特徴的なベルトが装備されています。
これに対して、バイクレーサーが着用するレーシングスーツには、このようなベルトは装備されません。
この肩ベルト、いったい何のために装備されているのでしょうか?
肩ベルトは、ドライバーを救出するため
F1マシンの運転席は、ギリギリまで軽量化および空気抵抗を減らすため、ドライバーがピッタリひとり入るだけのスペースしかありません。そのため、マシンを乗り降りする時には、その度にステアリングを取り外しているほどです。
F1マシンがクラッシュを起こした場合、オフィシャルと呼ばれるサーキットスタッフがドライバーの救助を行います。この時、F1マシンの様に運転席が狭いと、ドライバーの脇に手を入れて引っ張り出す事ができません。
ヘルメットを引っ張れば、なんとか救助できそうな気もしますが、そうするとかえってドライバーに負傷を負わせる事になります。
こんな時にドライバーの身体にしっかりとしたベルトが装備されていれば、そのベルトに両手を入れて力いっぱい引っ張り出すことができます。
ここまで読めばもう答えはわかりますね。そうです。レーシングスーツの肩にベルトが装備されているのは、ドライバーがクラッシュを起こして動けなくなったとき、オフィシャルがそのベルトを引っ張って救助するためなのです。
肩ベルトは、デザイン上のアクセントにもなっている
肩ベルトがアクセントになって、レーシングスーツをカッコよく見せる効果があるので、ただのおしゃれアイテムのように見えますが、実際にはこのようにとても重要な機能が隠されています。
また、バイクレーサーの肩にベルトが装備されないのは、マシンの中に閉じ込められる可能性が全く無いからです。その代わり、転倒した時に備えてショルダーパットが装備されます。
肩ベルトのアイディアは第一次世界大戦の戦闘服にあり
このレーシングスーツに装備される肩ベルト、そのアイディアの源流は、第一次世界大戦当時、兵士の為に開発された「トレンチコート」にあります。
このトレンチコートには、過酷な戦闘に耐えるように様々な工夫が凝らされています。レーシングスーツと同じように肩ベルトが装備されているのも、その工夫のひとつです。
トレンチコートの肩ベルトは、ショルダーストラップと呼ばれ、片側をボタンで留めるようになっています。そのため、このボタンを外すことで様々な物を肩に固定することができます。
現在では、おしゃれな定番アイテムとして広く普及しているトレンチコートですが、元々は過酷な戦場で生き抜くために開発されたものだなんて、ちょっとギャップが大きすぎて驚いてしまいますね。