中年サラリーマンを中心に高い人気を誇るゴルフですが、一流の道具を揃えようとすると、ひとセットで数十万円にもなることがあります。
こんな高価で大切なゴルフセットですが、これを小さなマンションに保管するのは大変です。また、しょっちゅうゴルフに出かけるという人の場合、一々押入れから引っ張り出して来て車に乗せるというのも面倒です。
そこで多くのお父さんゴルファー達は、愛車のトランクにゴルフセットを積みっぱなしにしています。しかし、これが原因となって悲惨なトラブルに巻き込まれることがあります。
今回の【こぼれ話】は、そんなゴルフセットにまつわるお話です。
車のトランクに高価なゴルフバック
1989年11 月。千葉市。
会社社長のAさん(47歳)は、自宅マンション駐車場に車を停め、トランクの中にゴルフセットを積みっぱなしにしていました。
重いゴルフセットを一々担いで、マンションの中に持って上がるのが億劫だったからです。
その日の深夜。駐車場に怪しい男が現れます。同じ千葉市に住む無職O(32歳)です。
Oは辺りをキョロキョロと見回すと、ドライバーを手にAさんの車に接近。手慣れた手つきでドライバーを持ち変えると、やにわにキーシリンダーに突っ込みます。ガチャガチャとやっているうちにキーシリンダーは壊れ、トランクリッドが大きく開いてしまいます。
ゴルフセットは質屋で換金
翌朝になって駐車場にやってきたAさんは、その時になって初めて車上荒らしに気が付きます。トランクは無残に破壊され、中にあった総額17万円のゴルフセットはこつ然と姿を消していました。
この事件をきっかけに、千葉、東京、埼玉と、広い範囲で同様の事件が繰り返されていきます。千葉県警はこれを同一犯の犯行と推測し、大規模な捜査を展開。そのかいあって、しばらくするとOの身元が割れ、自宅前で待機していた警察官によって逮捕されました。
ただ、残念ながらすでにAさんのゴルフセットは質屋へと流れ、2万円に換金されていたそうです。
犯行をパターン化する事でリスクを最小限に
その後の捜査でOは合計50件の犯行を繰り返し、総額2000万円のモノを盗んでいた事が判明します。
驚く事に、その犯行の全てが車のトランクに積みっぱなしになっていたゴルフセットです。
犯人のOは、何かの拍子に、中高年の男性が車にゴルフセットを積みっぱなしにしている事に気付き、昼間に駐車場を物色しては夜中を待って犯行を繰り返していたそうです。
この気付きの素晴らしさも然ることながらが、一番感心したのは、犯行をパターン化することでリスクを減らしていた事です。安易に犯罪などに走らず、商売やビジネスに努力していればもっと違った結果になっていたかもしれませんね。
車上荒らしを防ぐには
前回の【こぼれ話】でも紹介した通り、「車上荒らし」を避けるには車にモノを積みっぱなしにしない事が大切です。
特に車外からよく見える場所に、バックなど犯人の興味を引きそうなものを放置すれば、「どうぞ勝手に持って行ってください」と言っているようなものです。
また、今回のゴルフセットのように重いものを積みっぱなしにしていれば、燃費も下がるので何も良いことはありません。高価なゴルフセットの場合は、トランク内でガチャガチャとぶつかり合って壊れてしまうかもしれません。
その他には人目に付きやすい駐車場に停めるとか、防犯カメラやセキュリティのしっかりしている駐車場を選ぶというもの、大きな抑止効果になります。