大学生が交通事故に遭って入院した時、その間の授業に出ることは事実上不可能です。そのため、事故が原因となって単位が不足してしまい、1年間の留年となる事も珍しくありません。
サラリーマンや個人事業主の場合は、この期間の収入を計算する事によって、損害賠償を請求することができます。しかし、学生の場合は収入がありませんので、同じような計算で損害賠償を求めることはできません。
無駄となった一年分の授業料と交通費
まず、学生の場合は1年間の留年によって無駄となった授業料や交通費を、「損害賠償」として請求することができます。
請求するには、事故と留年の関係を証明するとともに、授業料や交通費の額を証明する書類が必要になります。こういった書類は、大学に依頼する事で揃えてもらえるでしょう。
本来なら働いて得るはずだった、1年分の賃金
次に、留年した事によって、本来なら得ることのできた卒業後1年分の給与を「逸失利益」として請求できるかどうかという点です。
卒業後、22歳から65歳まで会社で働くとすれば、43年分の給与をもらう事ができます。これが事故によって1年少なくなるのですから、当然、逸失利益として請求する事は可能です。
逸失利益の計算には、男女別の全年齢平均賃金が使われます。支払われる額は、本来の43年分の給与から実際に働いて得ることになる42年分の給与を引いた額ではなく、初任給1年分が支払われます。実際に減額されるのは給与が高くなった定年間際1年分の賃金ですから、ちょっと損をしたような気分になりますね。
事故に遭ったのが内定後だった場合、逸失利益の計算に使われる基準賃金は「全年齢平均賃金」ではなく、その内定していた会社の給与体系が基準となります。
内定取り消し後、就職活動の経費は?
留年した後、内定先企業が内定を取り消す場合もあります。多くの企業は、その年ごとに採用計画を立てていますので、留年した人に対しては補欠用員を補充して対応します。
こういった場合は、あらためてもう一度就職活動をする事になります。そのため、就職活動のために再び必要となった交通費などの経費は、資料を揃えて請求すれば、損害賠償として支払いを受けることができます。
その後内定した会社が、始めの会社よりも規模が小さく賃金も大きく下がる場合もあるでしょう。しかし、残念ながらそういった部分まで保障されることはありません。