逸失利益とは、被害者が予期せぬ交通事故に遭って死亡や後遺症を負った時、事故に遭っていなければ得られたであろう生涯収入の事です。
逸失利益を求める時には、生涯収入から利息を引いて計算する
この逸失利益を遺族が受け取る場合には、本来得られたであろう生涯賃金を先払いすることになるので、その分の利息を生涯賃金から差し引いて支払われます。
これを「中間利息」といい、民事法定利率の5分で計算されることが多いです。
自分の大切な家族が亡くなっているのに、その生涯賃金からさらに利息分が引かれるなんて、遺族にとってはちょっと納得のいかないことかもしれません。
しかし、逸失利益の考え方では、利息分を減額することなく支払えば、遺族に不当な利益が渡る事になるのです。
例えば、銀行から100万を1年後に返す約束でお金を借りた時、年利5%の場合は元本に利息を足して105万円を返す事になります。逸失利益の計算はこの銀行の「利息」と基本的な理屈は同じです。つまり生涯の年収をそのまま一度に貰うことで、利息分を得していることになるのです。
単利方式と複利方式
この利息分を計算する方法としては、単利方式と複利方式があります。
元本×期間×利息という計算式で単純に求められるのが「単利方式」です。これに対して、一定期間ごとに元本に利息を組み入れて計算する方法を「複利方式」といいます。
お金を貸す立場では、「複利方式」の方が有利になりますが、被害者の立場では「単利方式」の方が有利です。
新ホフマン方式とライプニッツ方式
この計算方法にはそれぞれ名前が付けられており、単利で計算する方式を「ホフマン方式」といい、複利の場合を「ライプニッツ方式」と呼びます。
さらにこのホフマン方式を、被害者に有利になるように改定したものを「新ホフマン方式」と呼びます。
現在主に使われている方式は、「ライプニッツ方式」と「新ホフマン方式」ですが、徐々に「ライプニッツ方式」が主流になりつつあります。
具体的な計算方法
具体的に遺族が受け取る事のできる逸失利益を計算するには、被害者の年収から生活費を引いた額に、就労可能年数(自賠責保険の場合は67歳まで)と計算式から求めた係数を掛けます。
ライプニッツ方式と新ホフマン方式は、地方によってそのどちらかが使われたり、両方が併用されたりとまちまちです。任意保険を計算する際には、その地域で使われている計算方式が使われる事になります。
基本的には新ホフマン方式の方が被害者に有利となりますが、被害者の年齢などや条件により、厳密にどちらが有利ということは一概にいえません。