逸失利益とは、事故に遭ったことによって失ってしまった「本来得られていたはずの利益」のことを言います。
そのため、遺族はこの逸失利益を加害者に対して請求する権利を持つのです。
被害者が死亡したり後遺症を負ってしまったという場合には、この逸失利益が大きな問題となります。
「逸失利益」の計算方法
被害者がサラリーマンの場合の「逸失利益」は、今までの収入を証明する資料を元に、これから生涯に渡って得られたであろう収入を計算して求めます。
ただし、収入を一度にまとめて受け取ることになるので、その分の利息は全体の収入からあらかじめ引いておく事になります。
いうなればこれは生涯に渡って支払われる「休業補償」のようなものといえます。通常の休業補償との大きな違いは、すでに被害者が死亡しているため、被害者が生きるために必要となる生活費をこの額から差し引いて計算するという点にあります。
生活費として差し引く割合は家族持ちのサラリーマンで30%~35%、主婦の場合で35%~40%程度、単身者の場合は50%となります。
この割合は裁判所や保険会社によって定型化されており、被害者の状況が同じならばこの割合もほぼ同じくらいとなります。
自営業や自由業の人の場合は、どうのようにして「逸失利益」を計算するのか?
この逸失利益を計算する時に一番難しい問題となるのが、「被害者がこれから得るはずだった収入をどのように求めるのか」という点にあります。
大企業の正社員や公務員の場合は、給与体系がある程度しっかりと決められていますので比較的簡単に求めることができます。
これに対して中小の零細企業やベンチャー企業の場合は複雑です。業種や事業規模、経営者との人間関係なども複雑に関わってきますので、資料を元に簡単に計算するという訳にはいきません。
自営業や自由業の場合はさらに複雑です。そもそもこのような職種の場合は一定した収入というものが存在しませんので、逸失利益を計算する際には過去の収入実績などが参考にされます。そのため、大企業の社員のように年々収入が右肩上がりに増えるという事は期待できません。
失業している人の場合は、確実にこれからの収入を補償するものが何もありません。そのため、平均的なその年令での賃金を元に計算されることになります。ただし、働く意欲を完全に失っている人や、働く能力の無い人の場合は逸失利益を請求することができません。
逸失利益の本来の考えは、「事故により失われた本来得られたはずの利益を補償する」というものですので、こういった場合はどうしようもないのです。