都市部を走っているベンツの中を除くと、裕福そうな紳士や淑女が乗っていることが多いです。さしずめ会社の経営者や重役、お医者さん、もしくは芸能人といったところでしょうか。
これに対して田舎の観光地を走るベンツには、ちょっと注意が必要かもしれません。あくまでも僕の独断と偏見ですが、こういったベンツには厳つい風体のいかにも怖そうな人が乗っていることが多いからです。
特に真っ黒なスモークフィルムをガラスに貼り付けていたり、ローダウンしている古めのベンツの場合は危険度がぐっと跳ね上がります。同じ理由で古いレクサスやクラウンなんかにも、怖そうな人が乗っていることが多いです。この手のラグジュアリー系カスタムカーには、そういった人たちを引きつける何か強い魅力があるんでしょう。
今回ご紹介する「こぼれ話」は、運悪くこんなラグジュアリー系カスタムカーのドライバーとトラブルになった人のお話です。
自慢のベンツで奥能登観光
1990年代の前半ごろ。京都市在住のO(46歳)は自慢のメルセデス・ベンツ・ミディアムクラス(その後のEクラス)に女子大生のYさん(23歳)を乗せ、ゴージャスな気分で奥能登観光を楽しんでいました。
奥能登観光をたっぷりと楽しんだOは、宿に帰ろうと珠洲市の国道で突然Uターンをかまします。そこへ運悪く通りかかったのが、軽自動車に乗る金沢市の女性会社員A子さん(21歳)。急に反対車線に飛び出したOの車を交わしきれず接触してしまいました。
実際に過失が多いのはどう考えてもOの方ですが、腹の虫がおさまらないOは車の外へA子さんを引きずり出し、殴るけるの暴行を加えて全治1週間の怪我を負わせてしまいます。
この時、A子さんの車にはボーイフレンドのE君(22歳)が同乗していました。この状況を見て慌てたE君は急いでOとA子さんの間に割って入り、「落ち着いてください!車の修理費は保険金で払いますから」と謝ります。しかし、Oの怒りは収まりません。逆に「その言いぐさはなんだ!誠意が感じられない!」とさらにE君にも暴行、全治一ヶ月の大怪我を負わせてしまいました。
A子さんに大金を払わせようと、あの手この手でしつこく食い下がるO
この後、騒ぎを聞きつけて警察が到着するとOは態度を一変。自分が一方的な被害者を装い、怪我をしたふりまで始めます。
ここでOの狼藉三昧を警察に申告すれば、そのままOはブタ箱行きのはずです。しかし恐怖で身が縮んでいた二人は何も言うことができません。
警察は恐怖で曖昧な返事しかしない二人と演技過剰なOを見て、「この状況では正確な判断ができない」と一旦事情聴取を切り上げてしまいます。ただ、ここで警察に介入してもらっていた事がその後の解決に繋がるんですから、「事故を起こしたら警察を呼ぶ」という鉄則は需要ですね。
実際にOが負った損害はバンパーに付いた小さな傷だけなんですが、あの手この手でなんとかA子さんから大金を巻き上げようとその後もしつこく食い下がります。挙句の果てに二人を自分の宿に連れ込み、半ば監禁のような状態にまで追い込んでしまいます。
Eくんの機転でなんとかピンチを切り抜ける
このままではまずいと判断したE君は、一瞬のスキを見て宿のスタッフに警察への通報を頼みます。結局Oは、障害と恐喝の容疑であえなく「お縄」という結末です。
見た目が厳つい人が全てOのような極悪な人とは限りません。最近は普通の格好したサラリーマンが店や駅で暴言を吐くなんてこともあります。しかし「君子危うきに近寄らず」とも言いますし、念の為フルスモークを貼った古いベンツとか、ラグジュアリー系カスタムカーには近づかないほうが無難でしょう。