前を走っている車の急ブレーキが原因で追突事故を起こしたケースでは、普通は後ろから追突した車の方により大きな責任があります。前の車に後ろから追突したということは、後ろの車に「前方不注意」や「スピードの出し過ぎ」、「車間距離の不足」などの過失があるとみなされるからです。
ただし、前の車が「危険回避」以外の理由で「急ブレーキ」を踏んだ場合は別。前の車にも、その過失に応じた責任が負わされます。
今回は、そんな追突事故における責任の所在について詳しく解説していきます。
追突事故の原因となった急ブレーキに、「危険回避」の意図があったかどうか
前車の急ブレーキに「危険回避」の意図が無かったとみなされる状況としては、「道に迷って急に反転したくなった」とか、「歩道に知人を見つけて呼び止めたくなった」なんてケースがあります。
こういった理由で踏まれる急ブレーキは、安全に関わらないどうでもいいモノです。急ブレーキを踏んだ側にも相応の責任が負わされます。
これに対して「子供が急に飛び出してきた」とか、「突然、側道から入ってきた車に割り込まれた」なんて状況で踏まれる急ブレーキは、危険回避のためにやむを得ず踏まれた急ブレーキです。追突してきた側(後続車)に、より大きな責任が負わされる事になります。
事故の目撃者がいなかった場合
この時、重要になるのが、「危険回避のために踏まれた急ブレーキを目撃した人がるのか」、もしくは「それを証明するに足る証拠があるのか」という点です。
万が一、目撃者や証拠を見つけることができなければ、不注意によって踏まれた急ブレーキとみなされ、前車にも相応の責任が負わされる可能性があります。
といっても、後続車両に全く責任が無いという事は考えにくいので、「前車にいくらかの責任を問いながらも、後続車両により大きな責任を負わせる」という事になるでしょう。
逆に急ブレーキを踏む十分な理由があると認められた場合は、追突された側(前車)の責任が問われることはありません。
こんな時にあると便利なのが、事故の衝撃に反応して映像を保存する「ドライブレコーダー」です。最近は5000円程度から購入できますが、ナンバープレートを認識できる程度の性能は確保しておきましょう。
赤信号で停車中に追突された場合は?
赤信号で停車中に後ろから追突された場合は、追突した車(後続車)に100%の責任があります。追突された側(前車)は、道路交通法を忠実に守って停止していただけだからです。
赤信号で停車しようとすると「後続車両が煽り立てるようにグングン迫ってくる」なんて事もあります。こんな状況で追突事故が起きたとしても、前車は交通法規を守って停止したのですから責任を問われることはありません。
ただし、責任を問われないといっても、事故で失う健康や時間、精神的損失は取り戻せません。こんな場合は予め後続車両を先に活かせるか、脇に寄せながら停車した方が無難です。
物損事故と人身事故の違い
物損事故の場合は、前車と後続車両の過失割合に応じ、それぞれ損害賠償の額も決められます。
これに対して人身事故の場合は、どちらが加害者がハッキリさせる必要があります。
追突してきた側(後続車両)が加害者となる場合、後続車両のドライバーが死傷したとしても自損事故用の保険金しか受け取ることはできません。
これに対して追突された側(前車)の乗員が死傷した場合は、前車に明らかな過失があると認められる場合を除き、大きな責任を負わされることはありません。
追突事故を防ぐには
追突事故を防ぐには、「無闇に急ブレーキを踏まない」という事が大切です。そのためには予め交通の流れの先を読んで、停止するポイントの少し手前からブレーキを踏み始めるようにしてください。こういったスムーズなブレーキングは事故の確率を減らすだけでなく、快適な乗り心地や自動車の寿命を延ばすことにも繋がります。
自分が後続車の場合は、前車が急ブレーキを踏んでも対処できるように「十分な車間距離を空けておく」ということも重要です。
自分の直前を走る車の動きをよく見ておくことは当然として、その1台前や2台前の動きを見ることも忘れてはいけません。
自分の直前を走る車が、リアウィンドウに濃いスモークフィルムを貼ったワンボックスカーや大きなトラック、車高の高いSUVの場合は、普通の車以上に前方視界が遮られてしまいます。こんな時は普段以上に車間距離を取り、安全な運転に必要となる十分な視界を確保しましょう。