中古車ディーラーで車を見ていると、びっくりするぐらい程度の良い人気車が、驚きの低価格で売られていることがあります。
中古車の値段は、新車と違って基準があってないようなものです。そのため、車の人気や経済情勢によって大きく価格が上下することはよくあります。
ただ、他の同程度の車と比較してあまりに安いようであれば、走行距離の巻き戻しを疑ってみたほうがいいかもしれません。
走行距離メーター巻き戻しを請け負う「巻き戻し屋」
最近の車の走行距離メーターは、デジタル化されているため、そう簡単に巻き戻すことはできませんが、専門の裏業者に掛かってしまえば、デジタルもアナログも大きな違いはありません。
こうのような裏業者を、業界では「巻き戻し屋」とか、「M屋」などと呼びます。中古車に作業指示書を付けてこの「巻き戻し屋」にあずければ、あっという間にメーターを巻き戻してもらうことができます。その作業料は良心的に数千円といったことが多いようです。
例えば作業指示書に、「2006年型 銀 マツダ ロードスター 90324 45967」と記入してあれば、「2006年型 シルバーのマツダロードスターの走行距離メーターを、90,324kmから45,967kmに巻き戻してくれ」という意味になります。
このたった数千円の出費で、悪徳中古車業者は、数万円から多い時には数十万円の利益を上乗せすることが出来るのですから笑いがとまりません。
この中古車の不正なメーター巻き戻しは、立派な詐欺罪にあたる犯罪行為ですが、なかなかその実態を掴みにくいため、思ったように検挙をすることが出来ないのが実情です。
悪徳業者を駆逐するための新しい法律を制定
そのため、政府は国を挙げてこの不法行為を取り締まるべく、車検法の一部を改正しています。2004年には普通車に対して、車検時における過去2回分の走行距離を車検証に記入することが義務付けられるようになりました。軽自動車についても、2009年より同様の内容が義務付けられています。
この新しい法律により、一時、不正な走行距離メーター巻き戻しは見られなくなりましたが、その後、法律の穴を見つけて再び走行距離メーターの巻き戻しを行う業者が増えつつあります。
法律の穴をついた悪徳業者の新しい手法
その新しい詐欺の手法はこうです。法律の過去2回分しか車検証に記入しなくていいという点を利用し、メーターを巻き戻した状態で一度車検を受けます。このままでは、検査員にあやしまれそうですが、メーターが壊れたとかなんとか言ってごまかせば、それ以上追求する事はできません。
この時点で、車検証には不正に巻き戻した走行距離と、前回の正規の走行距離が記載されています。そこですぐにまた車検場に車を持込み、再び車検を受けます。こうすることで、なんと、始めの車検時に記入された不正な走行距離と、その後に車検を取った時に記入された不正な走行距離だけが書類に残り、見事に正規の走行距離は書類上から姿を消すことになるというわけです。
また、車検は手数料さえ払えば、何度でも受ける事ができるそうです。改造による車検取得などの事情によりこういった制度になっているのでしょうが、なんともよくこの抜け道を探し出したなと、呆れながらも感心してしまいました。
法律の抜け穴をふさぐ新しい法律
しかし、政府も法の抜け穴をそのまま放置するほど間抜けではありません。新しく2017年の1月から施行された法律では、不自然に走行距離が減った時は、それまでの最大走行距離を必ず車検証に記入する事が義務付けられ、走行距離の不正な書き換えが事実上出来ないように工夫されています。