日本でも最近は外国からの窃盗団が入り込み、ハイエースやプリウス、インプレッサWRX等、利幅の大きな自動車の窃盗が増えています。
こういったプロの窃盗団は、車をある意味商品として扱いますので、盗んだ後に事故を起こすような事はほとんどありません。
これに対して、ちょっとした出来心やいたずら心から起こす素人の自動車泥棒の場合、技術の未熟さや滅多にやらない事への興奮から、逃走中に事故を起こすことが多いようです。
こういった盗難車による交通事故の場合、状況によっては盗難車の持ち主にも損害賠償の責任が及ぶことがあります。
持ち主は「運行共用者」なのか?
自動車の持ち主に損害賠償の責任があるのかどうかについては、「持ち主はその車の運行共用者なのか」という点が焦点となります。
自動車は盗まれる事で、車は持ち主の手を離れ、持ち主はその車の運行を支配することが出来なくなっています。加えて、その車から利益を得ることも不可能ですから、法的には車が盗まれた時点で持ち主は「運行共用者でなくなった」という事が成立します。
つまり、盗まれた車で犯人が事故を起こした時、その事故の損害賠償責任を負うことになるのは、運転していた犯人だけという事です。
管理者責任は適切に果たされていたか?
ただし、持ち主にもその車の「管理者責任」がありますので、車が盗まれた時、「適切に盗難防止の配慮がされていたかどうか」という事が問われます。
駐車禁止の路上に、鍵を付けたまま違法に駐車していたような場合は、適切な管理を怠っていたとみなされ、持ち主にも損害賠償の責任が及びます。
これに対して、人が自由に出入りすることの出来ない駐車場であれば、例え鍵を付けたまま放置していたとしても、損害賠償の責任を問われることはありません。加えて持ち主は、犯人に対して車の損害賠償を請求することができます。
犯人が逃走した場合は?
また、盗難車が交通事故を起こした時、犯人が逃走して行方不明になってしまった場合はどうなるのでしょうか。
こういった場合でも、車の管理が適切に行われていれば持ち主に責任が及ぶことはありません。ただし、被害者は損害賠償を請求する相手がいないわけですから、自賠責法の範囲内でだけでしか補償を受けることが出来なくなってしまいます。
車の持ち主については、盗難補償の付いた車両保険に加入していれば、損害を保険によって補償してもらえますが、そうでない時は諦めるしかりません。