自分の意思で運転していた時に起こした事故については、当然、運転者に責任があることは明白ですが、同乗者に「どうしても運転して送ってほしい」と頼まれて運転していた場合、事故の賠償責任は誰にあるのでしょうか?
こういった場合、たとえ運転者が好意で同乗者を送っていたとしても、事故の責任は運転者本人にあります。そのため、同乗していた人の怪我につても全額補償する義務があります。
強引な依頼によって同乗者を乗せた時
ただ、深夜に運転者が熟睡している時、突然電話が掛かってきて依頼者の自宅までの送迎を頼まれた場合はどうでしょう。
運転者は、「眠いから運転は無理だ」と一度断りますが、深夜で移動手段の無い依頼者は、執拗に食い下がってなんとか運転者に送迎を承諾させたとします。
こういう場合は、一見、依頼してきた同乗者にもいくらかの責任がありそうに思えますが、運転の責任はあくまでも運転者とその車の運行共用者にあります。
そのため、同乗していた人が怪我をした場合は、その怪我に対する補償は全額その運転者と運行共用者が負うことになります。
ただし、こういう「運転者に正常な運転が出来ないことが明らかな時」は、強引に送迎を依頼した人にもいくらかの過失がありますので、慰謝料については全額支払われることはなく、いくらかの減額が行われることになるでしょう。
単純な好意で乗せてあげた時
またこれによく似たケースとして、単純な好意で同乗させてあげた場合はどうでしょう?
例えば、急激な雨の中、傘を忘れた友人Bさんが駅でどうする事もできなく立ち往生しています。そんな時、Aさんが偶然通りかかり自宅まで送ってあげることにしますが、その道中、不注意にも事故を起こしてしまった場合です。
こういった場合についても、その車を運転していたAさんに全面的な責任があります。Bさんが無理やり運転を頼んだという事実もありませんので、治療費の他、慰謝料についても全額Aさんに支払い義務が生じます。
同乗者に過失があればその分は過失相殺される
ただし、Aさんが運転中、明らかに運転の妨害となるような行為をBさんが行ったという事実があれば別です。この場合は、Bさんにも過失がとわれ、その内容によって慰謝料の減額の他、悪質な場合であればBさんに過失が問われることも考えられます。
このように同乗者にも過失があれば、その程度によって双方の損害額が減額されたり増額されたりして、損害賠償額の過失相殺が行われます。
また、同乗させた相手が、普段同じ車を使う「運行共用者」の場合は損害賠償は発生しません。ただし、こういう場合の運行供用者は、家族かもしくはそれに準ずる人でしょうから、実質的には損害賠償を家族内の経費で賄うことになります。