正式に婚姻届を提出していない内縁関係の妻ないし夫の場合、法律上は「遺産相続権」がありませんが、交通事故による「損害賠償請求権」は与えられます。
ただし被害者に正式な妻や夫が存在している場合、被害者の愛人に対しては「損害賠償請求権」は与えられません。
目次
- 事実上の婚姻関係にある人のケース
- 愛人関係にある人のケース
- 内縁関係にある人との間に生まれた子供のケース
事実上の婚姻関係にある人のケース
被害者との間に正式な婚姻届を取り交わしていないものの事実上の婚姻関係にある人の場合は、正式な婚姻関係に近い権利が認められます。
例えば、後日に婚姻届を提出つもりですでに同居を開始している場合や、同居はしているもののお互いの価値観によりあえて婚姻届を提出していないなどのケースがこれに当たります。
こういった被害者との間に事実上の婚姻関係が認められる人の場合は、交通事故による「損害賠償請求権」が発生します。
これに対して二人の間に同居の実態がない場合は、なかなか「損害賠償請求権」が認められません。婚約がすでに成立しており具体的な同居の予定があれば別ですが、同居の予定もなく、経済的にも互いに自立しているような場合は婚姻の実態があるとは認められないのです。
ただし、被害者の収入によってある程度の生活費をまかなっていたような人の場合は、「扶養請求権の喪失」として「逸失利益の賠償」を加害者側に請求できた判例があります。
愛人関係にある人のケース
被害者に正式な妻や夫などの配偶者がいる場合、その配偶者に「相続権」と「損害賠償請求権」が発生するため、愛人関係にある人に「損害賠償の請求権」が与えられることはありません。
ただし、正式な配偶者との関係が実質的に破綻しており、愛人と被害者が一定期間以上にわたり同居して経済的にも依存関係が認められる場合は、「扶養請求権の喪失」として加害者側に損害賠償や慰謝料を請求することができます。
内縁関係にある人との間に生まれた非嫡出子のケース
内縁関係にある人との間に生まれた子供(非嫡出子)の場合、父親が正式に認知を行っていれば、婚姻関係にある人との間に生まれた子供(嫡出子)と同様、相続権や損害賠償請求権が与えられます。
また、遺族としても逸失利益の請求権や慰謝料の請求権が与えられます。
もともと「非嫡出子」については、婚姻関係のある男女の間に産まれた「嫡出子」の半分しか「財産相続権」が与えられていませんでした。ただ、これでは嫡出子との間に人権上の不平等が発生すると問題視され、平成25年の民法改正により現在の権利が認められるようになりました。