ハンドリングの中でよく問題になる要素に「ローリング」がありますが、その中でも重要な要素が「ロールスピード」です。
ロールスピードとは
ロールスピードが速いというのは、ステアリングをスパッと切るとその動きに車が即座に反応して、ドライバーが意図している以上に速いスピードでボディが傾いてしまう状態のことです。
このロールスピードが速すぎると、ドライバーはびっくりして恐怖を感じてしまいますが、ある程度ゆっくりとしたスピードであれば、安心してコーナーをクリアしていくことができます。
ロールスピードの速い車は怖い
また、高速道路を走っている時にレーンチェンジでハンドルを切ると、速いスピードでボディが傾いてしまうというのも、ロールスピードの速い車の特徴です。この場合もドライバーは大きな恐怖を感じてしまいます。
このロールスピードの速い典型的な車には、ちょっと前のゆったり系のアメリカ車やレンジローバーなどのSUVが挙げられ、その逆にロールスピードの遅い車の典型としては、メルセデスベンツなどに代表されるドイツ車が挙げられます。
特にメルセデスベンツのスポーティなセッティングが施された車種は、160km/h程度の高速走行から、ハンドルをスパッと切り込んでも、意図的にワンテンポ遅れてステアリングが効き始めるようなセッティングが施されています。
そのため、アウトバーンのような高速走行時においても、なめらかで安心感のあるレーンチェンジが可能なのです。
小さく軽い車はロールスピードが遅い
基本的に、小さくて軽い車はロールスピードが遅くなる傾向があります。そのため、軽量で脚の固められたスポーツカーは、スパッとハンドルを切り込んでも、がっしりとしたサスペンションで踏ん張り、速いスピードのロールを発生させません。その結果ドライバーの意図した通りに、キビキビと安心して曲がることができるのです。
しかし、いかにロールスピードを遅くしたいからといって、足廻りを固めすぎると今度は乗り心地が硬く、バランスの悪い車となってしまいます。スポーツカーであれば、ドライバーもある程度の硬さには目をつぶってくれますが、乗用車ではそうもいきません。
ロールスピードと乗り心地のバランス
ロールスピードと乗り心地のコントロールには、ダンパーとスプリングの設定が重要になります。乗り心地を良くしようとスプリングを柔らかくしすぎると、ダンパーを固めてロールを抑える必要がありますが、そうなると、強い衝撃を受けた時やコーナリング時に、ダンパーにゴツゴツとした違和感が発生してしまいます。
このように、ロールと乗り心地の最適なバランスを見つけるのは、なかなか難しい作業を伴います。
メルセデスベンツやBMWは、最終的な車体の傾きで言えば、ロールスピードの速い車とそう大差はありません。そこに至るまでの、スピードの出方が穏やかで自然なので、安心して車を運転できるというだけなのです。
スポーツカーのようにガチガチに固めるわけでもなく、乗り心地とロールスピードのバランスが取れているのは、このあたりのセッティングに秘密があります。また、このセッティングこそがドイツ高級車と日本車との大きな差でもあります。