新型 スバル インプレッサ スポーツ 2.0i-L EyeSight AWD(5代目)【試乗評価】クラスを超えた圧倒的質感 [DBA-GT7]

今回の【試乗評価】は、「新型 スバル インプレッサ スポーツ 2.0i-L EyeSight AWD(5代目)」。
2016年にフルモデルチェンジした、中小型クラスの5ドアハッチバックです。

僕が「インプレッサ」と聞いて一番に思い出すのは、やはり初代の「インプレッサ WRX」ですかねえ。当時、お金の無い学生だったので試乗しただけなんですが。

コンパクトなボディに2.0Lのツインカムターボ(試乗車は4AT)を搭載していて、とにかく剛性感とトルクの塊のような車でした。試乗した日は小雨の降るようなあいにくの天気だったんで、路面は完全なウェット。ちょっとアクセルを踏み込めば瞬時にトルクがモリモリと湧き上がってくるので、スリップしやしないかとドキドキしながら運転してました。

インプレッサは当時から水平対向エンジンを縦置きにした「左右対称AWD(VTD付き)」だったので、まあ、もちろん簡単に滑るようなことはありません。

スバルのエンブレム

初代 スバル インプレッサ スポーツワゴン CS(1992年)【旧型レポート】おしゃれで個性的、高い実用性を持つ5ドア・ハッチバック [E-GF3]

2017年7月3日

「WRX」というサブネームからもなんとなく分かると思いますが、WRXは世界ラリー選手権に出場するために開発された車です。それから、当時大ブームとなった「レガシィ・ツーリングワゴン」の人気にあやかろうと、5ドアハッチバックには「スポーツワゴン」なんて不思議なサブネームも付けられてましたっけ。

そんなスポーティなイメージが強い初代に対して、5代目インプレッサスポーツは先進安全技術「EyeSight」や「歩行者保護エアバッグ」、新世代プラットフォーム「SPG」の採用なんかで完全に安全性能を前面に押し出した感があります。

スバルの根幹を支えるエントリーモデルとして、また、この後続々と登場してくる新世代スバル車の基本となることもあって、お金と資本がたっぷりと投入されています。「2016-2017 カー・オブ・ザ・イヤー」の受賞は伊達じゃあありません。

先代モデルについては、「新型 スバル インプレッサ スポーツ(GP)【試乗評価】」のページを御覧ください。

※じっくりと読む時間の無い人は、文末の「【試乗評価】のまとめ」をどうぞ↓

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「新型 スバル インプレッサ スポーツ 2.0i-L EyeSight AWD(5代目)」の概要

先代のインプレッサスポーツよりボディサイズが拡大され、ひと回り大きく立派になりました。拡大されたマージンは余裕のある室内とダイナミックなデザイン、それと安全性能の向上なんかに使われています。

見かけがあまりにも立派になったので、時にレヴォーグと見分けがつかず、ジロジロと他人の車を凝視するあやしいオジサン(僕のことですが)になっちゃうことも。

スバルエンブレム画像

新型 スバル インプレッサ スポーツ(GP)【試乗評価】ジョギングを楽しむような気軽さ [DBA-GP2]

2015年12月30日

安全性能を向上させているのはボディ性能だけではありません。国内初の「歩行者保護エアバッグ」や最新の先進安全技術「EyeSight(Ver.3)」なども搭載。このシステムには一定の車間を保って前車に追従する「全車速追従機能付きクルーズコントロール」も付いてます。

俗に言う「アダプティブ・クルーズコントロール」ってやつですが、交通量の多い高速道路では本当に助かります。一度使うと、これ無しでは面倒くさくて運転するのが嫌になるくらいです。

プラットフォームなど

基本となるプラットフォーム(基本骨格)は、新世代アーキテクチャー「SUBARU GLOBAL PLATFORM」。マニアの中には縮めて「SGP」なんて呼ぶ人もいます。重量増を最小限に抑えながらボディ剛性を大幅に向上。運動性能や燃費性能、安全性能など全域で性能が良くなってます。これからのスバルを背負って立つ重要なアーキテクチャーなんで、開発には多くの資金と技術が注ぎ込まれているみたいです。

「2.0i-L」に搭載されるエンジンは新開発された「2L直噴エンジン」。この他に1.6Lもあります。駆動方式は「前輪駆動(FF)」と「AWD」と呼ばれる「フルタイム4WD」の二種です。

ライバルは

「トヨタ・カローラ スポーツ」や「ホンダ・シビック ハッチバック」、「マツダ・アクセラ スポーツ」などの中小型・5ドアハッチバック。

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外観

ボディサイズ、全長4460mmX全幅1775mmX全高1480mm。ホイールベース、2670mm。

先代の若干角ばったデザインから少し滑らかでダイナミックなデザインへと変更されましたが、全体の印象はそんなに変わりません。まあ、キープコンセプトってことですね。

フロント

スバル・インプレッサ・スポーツgt7の前面画像

先代のカクカクとしたメカニカルなヘッドライトから、滑らかな曲線を多様した複雑で有機的なカタチになりました。初めて写真で見た時はちょっと殺風景で「なんか物足りないなあ」という印象だったけど、実物を見ると複雑な曲線がうまく調和しており奥深さというか味わいみたいなものがあります。「写真はいまいちだけど実車はかっこいい」というのはスバル車によくあるパターンなんです。

サイド

「フロントオーバーハング(前輪軸からボディ先端までの長さ)が長すぎてかっこ悪い」と言われる事の多いスバル車ですが、「インプレッサスポーツ」はリアオーバーハングを短く切り詰めることでバランスを取ってます。一般的に「リアオーバーハングが長ければフロントを、逆にフロントオーバーハングが長ければリアを短くするとバランスの良いスタイリングになる」と言われます。つまり宿命的にフロントオーバーハングの長いスバル車の場合は、リアを短くしやすいハッチバックが一番カッコいいってことです。

Dピラーを極端に寝かせることでクーペみたいなカッコいいボディスタイルになってます。といってもこれは錯覚で、実際にはサイドウィンドウ後端が滑らかに下降しているだけです。ルーフエンド自体はほぼ水平にリアウィドウ上端まで延長されているので、後席の頭上空間が圧迫されることはありません。つまり、デザインの力でかっこよさと実用性を両立しているわけですね。

リア

スバル・インプレッサ・スポーツgt7の後部画像

薄く横長のリアコンビランプをリアエンドの低い位置にレイアウト。上下に薄い八角系型のリアウィンドウと組み合わせることで、重心の低いスポーティなスタイリングになってます。

カジュアルな印象を抱かせる先代に対して、新型インプレッサには伸びやかでスポーティな印象です。「インプレッサ」は兄弟車「XV」のベースでもあるんですが、ゴツゴツとした「XV」の世界観には先代の方が合っていると思います。

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内装

「スバル車の内容は良いけど、インテリアデザインが野暮ったくて」と言われることがありますが、インプレッサの内装はちょっと違います。ブラック樹脂にキリッとしたシルバーパーツがあしらわれ、まるでデザイナーのスケッチからそのまま抜け出てきたかのようなカッコよさです。

スバル・インプレッサ・スポーツgt7のステアリング画像

メーターナセルにはシルバーリングで縁取られた二眼メーター。ステアリングは本革巻きでシルバーのステッチが施されます。スイッチ周りのメカニカルなデザインも良い感じです。

ちょっとビックリしたのがウィンカーのクリック音。なんというか、小気味いい感じで「ああ、俺は先進的な車に乗ってるんだなあ」という気持ちになります。試乗する機会があれば、是非試して欲しいです。

スバル・インプレッサ・スポーツgt7のナビ画像

インパネ周りにもステッチが施されますが、ちょっとイミテーションぽくて今ひとつな感じ。インパネ周りが柔軟なソフトパッドならもっと本物らしく見えるかもしれません。これなら無理にステッチを入れず、潔くプラスチックの素材感で勝負したほうがシンプルでカッコ良いと思います。

スバル・インプレッサ・スポーツgt7のシフトレバー画像

エアコンはダイヤル式で、手探りでの操作も楽ちん。

スタイリッシュなデザインの割りにボディの見切りが良く、運転しやすいです。太いDピラー(一番後の柱)も運転席の視点で見ると結構薄く、後を見る邪魔にはなりません。

シート

標準シートは、ファブリックとトリコットのコンビシート。オプションで「ブラックレザーセレクション」を選択すると、標準シートよりもしなやかな本革表皮となります。

スバル・インプレッサ・スポーツgt7の前席画像

フロントシートにはたっぷりとしたサイズと厚みがあり、形も立体的なんで見るからに座り心地が良さそうです。ただ、実際に座って見ると10分ほどで腰が痛くなりました。若干表皮の柔軟性が足りないのかもしれません(後日、”ブラックレザーセレクション”と呼ばれる本革仕様に試乗したところ腰の痛みはありませんでした)。シートの座り心地は、体型との相性やその日の体調なんかも関係しますので、気になる人は一度自分で試乗してみてください。

スバル・インプレッサ・スポーツgt7の後席画像

リアシートには大人が十分座れるだけのスペースが確保されてます。スタイリッシュなデザインの割に、頭上空間も十分。足元には広々とした余裕があります。大人二人で座っても「狭苦しくてかなわん!」なんてことにはなりません。

荷室

スバル・インプレッサ・スポーツgt7の荷室画像

インプレッサスポーツは、元々「スポーツワゴン」と呼ばれていたこともあって、5ドアハッチバックとステーションワゴンの中間的なキャラクターが与えられています。5ドアハッチバックとしては荷室が広く前後長も長いため、結構たくさんの荷物が積めます。家族4人くらいなら2泊3日旅行も余裕でしょう。

さらにリアシートの背もたれを(4:6で)倒せば、ステーションワゴンのような使い方もできます。3名乗車でスノーボードとかスキーに行くなら、設置の面倒なルーフキャリアは要りません。

静粛性

レガシィほどではありませんが、室内の静粛性も上々。新世代エンジンとスムーズなCVT、新世代アーキテクチャ「SPG」がバッチリ効いてます。

エンジンとトランスミッション

1995cc・水平対向DOHCエンジンに、CVT(無段変速機)の組み合わせ。
エンジンは、最高出力154ps/6000rpm、最大トルク20.0kgf・m/4000rpmを発揮。

車両重量1370kg。JC08モード燃費、16.8km/l。

エンジン

2.0リッターのツインカムエンジンで4輪を駆動(フルタイム4WD)。この他に1.6Lも用意されますが、普通の自然吸気エンジンだけでターボモデルはありません。

基本的なエンジン設計は先代と変わりませんが、フリクションの低減や設計の見直しによって4馬力だけパワフルになってます。ただし最大トルクの変更は無いです。

先代のような初期トルクの急激な立ち上がりは無くなりましたが、それでも多少走り出しが強めかな。最近のインプレッサ系に共通の特性なんで、なにか意図があってこのセッティングにしているんだと思います。個人的には、もうちょっとスムーズにトルクが立ち上がるほうが好きですが。

低速から中速にかけてはスムーズにトルクが立ち上がるので運転しやすいです。登坂路や合流ポイントでも力不足はありません。アクセル操作に対してリニアな加速感が得られるので、右足とエンジン、タイヤが一体になったような気持ちよさがあります。

普通に流しているだけなら直列4気筒と遜色のないスムーズさを発揮しますし、アクセルを強く踏み込むことでフラット4ならではのサウンドも楽しめます。ただし、ここぞという場面での瞬発力は物足りません。分厚い低速トルクを持つダウンサイジングターボなんかがあると最高なんですけど。そうなるとレヴォーグとの差別化が難しいのかな?

ステアリングにはアクセルやトランスミッション、エンジン特性を統合的に制御するドライブセレクター「SIドライブ」が付きます。これには燃費を重視した「Iモード」とスポーティな「Sモード」があるけど、普通に街中を流すだけなら「Iモード」で十分です。

トランスミッション

金属製のベルトとプーリーによって無断階に変速するCVTを装備。

設計の見直しによってフリクションの低減と小型軽量化、ギアレシオのワイド化が行われました。アクセルを強く踏み込めばトルコン式ATのような「ステップ制御」に切り替わり、それなりのダイレクト感を演出してます。半面、「CVTならではのスムーズさを失い、ダイレクト感もトルコン式ほどでは無い」という中途半端な感じは否めません。

運転好きにはDCTやトルコン式。日常領域でスムーズに走りたい人にはCVTと割り切った方が分かりやすいけど、コストを考えるとCVTの味付けで使い分ける方が良いのかな?

トルクフルな自然吸気エンジンに改良されたCVTが組み合わされるんで、ギクシャク感や不自然な動きはありません。運転のしやすさだけなら、ダウンサイジングターボを積んだレヴォーグよりも上のように感じました。

乗り心地とハンドリング

前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪にはダブルウィッシュボーン式サスペンションを装備。

乗り心地

装着タイヤは、205/50R17。

たっぷりとしたストロークと高められたボディ剛性なんかの影響で、しっとりとした重厚感があります。特に出だしから低速域にかけては、まるでフラットな氷の上を滑るよう。なんというか、ありきたりな言葉で言えば「ひとクラス上の上質感がある」って感じです。

17インチ装着車は16インチより多少引き締まってますが、重厚感をふくめたバランスの良さでは17インチの方が上。路面からの情報はしっかりと伝えながらも、不快な揺れや振動は遮断されてます。ゴツゴツ感や突き上げ感はありません。もちろん、うんと快適性に振った柔軟な乗り心地を求めるなら16インチの方がオススメですけど。

ブレーキは制動力の立ち上がり(踏み始め)にやや唐突な部分があるけど、ボディが”つんのめる”ほどではありません。ブレーキ自体はガッチリとしたフィール(剛性感が高い)で、ブレーキペダルを踏んだ量だけリニアに制動力が立ち上がります。

ハンドリング

やや重めのステアリングフィール。ドライバーが舵を切った分だけ正確に反応する感じで、素直な身のこなしが気持ちいいです。よく煮詰められた足回りとボディ剛性の高さ、重心の低さや重量バランスの良さなんかが上手く噛み合ってるんでしょうねえ。

リアの接地性が高いのでコーナリング中も安定した姿勢を崩しません。ロール自体はそれなりに許容するものの、ロールの出方が自然なんで走りやすいです。路面のうねりに対して上屋の動きが小さく抑えられてるって印象です。

最小回転半径は5.3m。大柄なボディサイズの割りに小回り性能が高く、狭い路地でも切り返しやすいです。

先進安全技術

先進安全技術は最新の「EyeSight(Ver.3)」にアップグレード。オプションで運転支援システム「アイサイトセイフティ+」も選べます。

EyeSightには「プリクラッシュブレーキ」や「後退時自動ブレーキ」、「AT誤発進抑制制御(前後)」など。アイサイトセイフティ+には「全車速追従機能付きクルーズコントロール」や「アクティブレーンキープ」なんかも付きます。

「プリクラッシュブレーキ」を実際に試すことはできませんが、レヴォーグで体験した時は結構寸前でガツンっと効く感じでした。「全車速追従機能付きクルーズコントロール」は制御が自然なんで、安心して車に任せられます。

「アクティブレーンキープ」には「警報&お知らせ機能」もついていて、レーンからはみ出しそうになると注意を促されます。単に僕の運転が悪いだけなんですが、左ラインに寄せる度に警報音が鳴るのでちょっと鬱陶しいです。この鬱陶しさを避けようとすればするほど、自然に運転が上達するという狙いかもしれませんね。

【試乗評価】のまとめ

「新型 スバル インプレッサ スポーツ 2.0i-L EyeSight AWD(5代目)」は、中小型クラスの5ドアハッチバック。モデルチェンジで内外装を含めて車全体の質感が高まったため、ひとクラス上の上質感があります。

ゴルフに迫る質感を得たと話も聞きますが、インプレッサにはゴルフほどの圧倒的な重厚感はありません。どちらかといえば、しなやかとか軽やかさを伴う程よい重厚感です。といっても、それはインプレッサよりもゴルフが優れているという話では無く、あくまでもキャラクターや方向性が違うという程度のことです。

元々スバル車は他のメーカーに比べて利益率が高いことで知られてますが、ことインプレッサに関しては逆で、「よくこの値段でこれだけの質感が実現できたな」というコストパフォーマンスの高さを感じます。

対象となるユーザー

「質感が高く、そこそこの荷物と人が積めて走りが楽しい車。さらに外観がスポーティでカッコよければ言うこと無い」とか、「外車や高級ブランドに興味が無く、実質的な質感の高さに拘りがある」なんて人にピッタリなクルマです。

中古車市場では

2017年式「スバル インプレッサ スポーツ 2.0i-L EyeSight AWD(5代目)」で230万円前後。2016年式なら210万円くらいになります(2018年11月現在)。

新車価格

2,397,600円(消費税込み)

ABOUTこの記事をかいた人

クルマ好きの40代男性。現在病気のため療養中です。

ブログは暇つぶし&リハビリ。週2で短時間のアルバイトをしていますが、普通の人のように毎日フルタイムで働くことはできません。

ブログの内容はあくまで秋ろーの個人的見解です。実際に車や商品、サービスを購入する際は、自分で試乗や調査をして確かめることをオススメします。

記事更新の時間は、大体、午後11時から12時頃にかけてを予定しています。

修正ばっかりしてると新記事の投稿ができないんで、新記事3に対して修正1くらいの割合でやってます(2019年6月〜)